総務省は4月14日,電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第4回会合を開催した。高速電力線通信では,2M~30MHzの高周波数帯を利用する。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送など他の無線が利用しているため,干渉問題が懸念されている。

 第4回となる今回は,国際的に漏えい電磁波の測定方法と許容値を規定する「CISPR」の委員を務める雨宮不二雄氏が,CISPRで規定している通信ケーブルから漏れ出す妨害波の電界強度の許容値と,その考え方を説明した。

 雨宮氏は,「電力線通信と極めて似た形態のADSL(asymmetric digital subscriber line)やVDSL(very high bit rate DSL)はこの許容値を踏襲している。電力線通信だけが踏襲しないというのもおかしい」と主張。電力線から漏れ出す電磁波の影響を受けるアマチュア無線や電波天文,短波放送など各無線通信への許容値として,CISPR規格の35dBuV/mを提案した。

 研究会の目標は,許容値を決定し,メーカーが電力線モデムを出荷するために必要な検査の方法や基準値を決定することにある。だが,これまでに4回の会合が開催されたにも関わらず,許容値に関する具体的な議論は進んでいないのが実情だ。

 研究会の座長を務める東北大学電気通信研究所教授の杉浦行氏は,最後に「高速電力線通信推進協議会(PLC-J)の提案とCISPR規格のどちらが適しているか意見を提出して欲しい」と発言。さらに,「(無線通信種別によって)どこまでなら許容できるのか,なるべく数値で出してほしい」と付け加えた。

 こうしたさい配について杉浦座長は,「研究会も次回で5回目。折り返し地点も近い。そろそろ許容値の議論を本格的に詰める必要がある」と説明。次回以降,作業が加速する可能性がでてきた。

 今のところ許容値の考え方には,PLC-J案とCISPR規格の二つが提案されている。だが杉浦座長には「別の案がある」という。具体的な内容については説明を控えた。

(山根 小雪=日経コミュニケーション