早くからIPセントレックスの導入に取り組んでいた東京ガスが,14拠点のPBX(構内交換機)を廃止して3100台のIP電話機を導入。全79拠点のPBX撤廃,全電話機2万台のIP化に向けたプロジェクトの第1段階を終了していたことが判明した。同社の 情報通信部ITインフラサービスグループの黒岩昇主席は「替えるべきPBXは替え,バックアップ回線も整備。ひと段落した。後はPBXの利用年数を見ながら,遅くとも5年以内には導入を完了する」という。

 2004年6月に方針を転換したことも明らかになった。当初は2003年6月から1年間で全拠点のPBXを一掃し,約2万台のIP電話機を一挙に導入する計画を立てていた。これをPBXの使用年数などを見ながら,拠点ごとに随時PBXを撤廃していくことにした。「各拠点にある100台近いPBXを廃棄するとして,計上すべき償却費を1台1台調べたら,全PBXを一斉に撤去するのはコスト面から得策ではないと判断した」(黒岩主席)からとする。これまでに撤去した20台弱のPBXは大規模拠点で10年以上使用したものという。

 バックアップ回線に関しては今年3月末に中小規模拠点の整備を完了した。FTTH回線(Bフレッツ)をバックアップ回線として導入した。なお東京ガスはメインのWAN回線として広域イーサネットを導入しており,大規模拠点は2重化による冗長構成にしている。

通信コストを年額4億円削減

 通信コストは約40%削減して年間6億円程度に抑えることができたという。これは主に社内ネットワークをATM専用線から広域イーサネットへ切り換えた回線コスト削減によるもの。

 一方,異動時の電話機の移設や設定変更のコストは「PBXの時よりもかかっている」(黒岩主席)という。従来はPBXの管理業者が1人でやっていた作業を,ベンダーや当社の情報システム関連会社など複数のスタッフでこなしているためである。ただし「次第にノウハウが蓄積しており,現時点では従来のPBXとほぼ同じレベルまで抑えた。今後はさらにコストダウンできる見通し」(黒岩主席)とする。

 東京ガスのIP電話導入プロジェクトは「IP電話導入で年間10億円の通信コストを5億円に半減」と2002年末に報道され,「東ガス・ショック」として当時業界の話題を集めた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション