CATV統括会社のジュピターテレコム(J-COM)は3月23日,ジャスダック証券取引所に株式上場した。J-COMは関東のジェイコム東京など,関西,九州,北海道の各エリアで合計19のCATV局を子会社として運営。これらのCATV局に映像やインターネット接続,電話のサービス基盤やコンテンツを提供している。

 今回の上場でJ-COMは約1000億円を調達。このうち500億円を負債の返還に,残りの500億円を事業の強化に充当する考え。今後の成長については「サービス・エリアを広げていくことで加入世帯を増やしていきたい。このため既存CATV局の隣接エリアを中心に,年間3~4社のCATV局を買収していくことを考えている。CATV局との資本面やビジネス面での提携も考えたい」(J-COMの森泉知行代表取締役社長兼最高経営責任者)。

 2004年12月の時点でJ-COMが子会社としていた18局合計の加入世帯数は187万3000。「全国のCATVユーザーの約30%のシェアを持つ」(森泉社長)という。このうち,75万1600世帯がインターネット,77万3000世帯が電話のサービスを契約している。

 J-COMなどCATV事業者には,東西NTTやKDDI,ソフトバンク・グループなどの大手通信事業者が展開するブロードバンド・サービスへの対抗という課題がある。これらの大手通信事業者がブロードバンドとあわせて,CATVの得意とする映像系のサービスへ展開し始めているからだ。

 この点についてJ-COMの森泉社長は「ブロードバンドによるIP配信では地上波の再送信ができないなどの欠陥がある。CATVの映像サービスでは地上波の再送信に加えて,ビデオ・オン・デマンドも提供中。映像に圧倒的に強い。また,インターネットについてはCATV網を利用した最大100Mビット/秒のサービス提供に向け,最終的な検討段階に入っている。FTTHに遜色ない」として十分に対抗できることを強調。

 さらに今年末には,ユーザーが好みの番組を録画して視聴できるハード・ディスク・ドライブ搭載のセットトップ・ボックスの投入を予定。映像サービスの強化を図る。電話については,回線交換型の電話サービスはすでに全国16局で展開。4月からは,札幌地区で緊急通報や既存電話番号を継続的に使えるIP電話サービスの提供を始める。電話のサービスを提供していない残りの2局にもIP電話を投入する予定。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション