総務大臣の諮問機関である情報通信審議会は3月10日,電話を全国あまねく提供するための制度「ユニバーサル・サービス」について議論する委員会会合を開催した(写真)。3年前に現在の制度を決めた時に比べて,携帯電話の定着や直収電話サービスの登場といった環境の変化がある。

 今回は,大手通信事業者や業界団体から寄せられた意見について整理。この中から総務省側が六つの論点を示した。具体的には(1)あまねく提供する通信サービスとする範囲と,基金制度で資金を補助すべき通信サービスが同じでいいのか,(2)ユニバーサル・サービス基金の補てん対象は東西NTTの赤字なのか,それとも不採算地域の電話サービスなのか,(3)2005年度以降,接続料のコストから段階的に控除されていくNTS(non traffic sensitive)コストをユニバーサル・サービスの費用で負担するのか,(4)基金を発動する条件を見直すのか,(5)基金で補助する費用の範囲を見直すのか,(6)携帯電話やブロードバンドなど,固定電話以外のサービスを制度の対象にするのか――である。

 10日はこのうち,(1)と(2)について議論。中でも携帯電話の扱いについて「ユニバーサル・サービスとして検討すべきだが,基金の給付対象ではなく他の方法でインセンティブを与えるべきでは」(神奈川大学経営学部助教授の関口博正専門委員)との意見が相次いだ。今後,携帯電話を巡り委員会と事業者,総務省のやり取りが活発化しそうだ。

 また,サービスの提供義務や基金の負担方法については,「現在は電話の代替手段が多くあるのに,東西NTTだけに提供義務を守らせるのが適当なのか」(慶応大学義塾大学法学部教授の藤原淳一郎専門員),「そもそも電話サービスの高コスト地域が本当にあるのか。確認すべき」(青山学院大学経営学部教授の東海幹夫委員)など様々な意見が交わされた。

 総務省は議論を秋までに収束させ,2006年4月にも運用を始めたい考え。次回の会合は3月24日に開催する予定。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション