データ通信速度が最大75Mビット/秒の高速無線LAN規格「WiMAX」(Worldwide Interoperability for Microwave Access)の周辺が慌ただしくなってきた。日本ではYOZANがWiMAXを使った定額制のIP電話サービスの計画を明らかにするなど,サービス開始に向けた動きが本格化している。独ハノーバーで開催中の「CeBIT 2005」の会場でWiMAX関連機器メーカーである英エアースパンネットワークスのプロダクトマネジメント&マーケティング担当副社長のポール・シニアー氏に,WiMAXの現在の動向などを聞いた(写真上)。同氏は,WiMAX関連機器の業界団体である「WiMAXフォーラム」のボード・メンバーでもある。

--現在のWiMAXの動向を教えてほしい。

 日本のYOZANがWiMAXの採用を決めるなど,商用サービス開始に向けて動き始めているところだ。YOZANは当社の「MicroMAX」(写真下)という基地局を導入する予定。6月には試験サービスを開始し,12月には東京23区内で商用サービスに移行する計画だ。YOZANのケースでは試験サービスで650個のアンテナ,本サービスでは1000個以上のアンテナが必要と試算している。

--携帯電話事業者はWiMAXに興味を示しているのか。

 例えば,独TモバイルなどはWiMAXに大変興味を示している。同社は英国の鉄道向けにWiMAXを使った無線LANサービスを提供することを明らかにしている。米スプリントもWiMAXの導入に向けて積極的だ。

--携帯電話事業者にとってWiMAXと第3世代携帯電話(3G)サービスは競合しないのか。

 携帯電話事業者の3Gサービスは,最高で300kビット/秒程度の通信速度。音声を中心としたコンテンツには十分だが,パソコンのデータ通信用途には向いていない。一方のWiMAXは20Mビット/秒の速度が出る。これがWiMAXの利点だ。ノート・パソコンなどでデータ通信用途に利用する場合,WiMAXは非常に有効な通信手段だ。携帯電話事業者にとって,WiMAXは3Gサービスと共存できると考えている。

--WiMAXフォーラムの今後の予定は。WiMAXフォーラムによる機器の認定は進んでいるのか。

 現在は固定の無線アクセス方式のWiMAXの規格化が終わり,携帯電話のようなモバイル型のWiMAXの標準化を進めているところだ。規格化が終わるのは2006年から2007年にかけてと考えている。WiMAXフォーラムによる機器同士の相互接続の認定は,2005年の下半期に始まる予定だ。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション,ハノーバー発)