KDDIは2004年から,携帯電話のアプリケーション・プラットフォームに「BREW」(binary runtime environment for wireless)を採用した。同社モバイルソリューション商品開発本部の阿部正吉モバイルソリューション1部長は「BREWが法人向けソリューションで多く利用されている」という(写真上)。阿部部長にBREWを使った法人向けアプリケーションの現状や,携帯電話機でパソコン向けWebページ閲覧を可能にする「フルブラウザ」との違いなどを聞いた。

--法人でのBREWアプリの利用例を教えて欲しい。

 代表的な例がスケジュール管理。これは当社でも導入している。各部署の社員のスケジュールを専用のサーバーで管理し,それをダウンロードして携帯電話から閲覧できる。グループウエアのスケジュール管理と日報機能を切り出して強化したようなアプリケーションだ。パソコン向けアプリケーションとも連携できる(写真下)。

 業務特化型のアプリケーションでも実績がある。例えば銀行や保険業向けのシステム。顧客の会社に出向いて商談をする際,顧客情報や入金/出金情報を出先から携帯電話で業務用サーバーとやり取りする。モバイル・プリンタとも連携し,その場で顧客控えの帳票などを打ち出せる。ほかに運輸業や保守業向けのGPS(全地球測位システム)による位置情報を使ったシステムなども実績がある。

--フルブラウザ搭載携帯電話機を使えば,既存の業務用Webアプリをそのまま利用できそうだが。

 業務アプリケーションをWebアプリで作って携帯電話機のフルブラウザで利用しようとすると,電波の届かないところでは一切業務アプリが使えなくなってしまう。だがBREWで作った業務アプリならば,データの入力画面などはローカルで動く。電波の届かないところで情報を入力し,届く場所に行ってから送信するという使い方が可能だ。

 また通信料金の節約にもなる。企業のイントラネットとKDDIの携帯電話網の接続は,専用線による従量課金メニューが一般的。BREWで作った業務アプリでは,送受信するのは最小限のデータだけで済む。ユーザー・インタフェース用の画像などを,携帯電話機ローカルに保存しておけるためだ。一方,フルブラウザで業務アプリを利用すると,画像などのダウンロードが必要になるためデータ量がかさみ通信料金が高くなりがちだ。

--携帯電話機に無線LAN通信機能を搭載する予定はあるのか。

 まずは使い方の提案が先で,その後にインフラの整備という順番だと考えている。無線LANがあると便利な使い方があれば,当然検討するだろう。トータルのコストを見て,最も良いものにしていきたい。

(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション