住友電気工業は3月8日,最大通信速度が200Mビット/秒の電力線通信モデム(PLCモデム)を発表した(写真)。住友電工は2004年2月に,最大200Mビット/秒の電力線モデムの開発を発表。2004年末からロシアに出荷を始めている。今回発表した新製品は,変調方式などの技術は海外向けと同じだが,国内での利用を意識して改良。東京電力と共同で開発した。

 海外向け製品との違いは,電力線(電灯線)から漏えいする電磁波の低減技術を盛り込んだ点と,きょう体をコンパクトにして価格を抑えるためにUSBポートをなくした点の2点である。変調方式にはOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)を採用している。

 日本では10k~450kHzの周波数を使う電力線通信が実用化済みだが,通信速度は約100kビット/秒と低速で用途が限られる。そこで2M~30MHzの周波数を使う高速タイプに注目が集まっている。だが高速電力線通信は,2002年夏に総務省が実用化の判断を先送りにした経緯がある。漏えいした電磁波が,短波帯を利用するアマチュア無線,ラジオ放送,船舶通信などに悪影響を与えることを避けるためである。

 その後もメーカー各社は利用場所を屋内に限定し,電磁波の漏れを抑える技術の開発を継続。総務省は2005年1月,実用化の検討を再び始めた。現在は研究会で議論の最中で,他の無線通信への影響を見ながら10月にも実用化の可否を決める予定だ。

 住友電工は以前から,東京電力と国内での実用化を視野にいれたモデムの開発を進めてきた。2004年8月からは同モデムを使った実証実験も実施しており,「漏えい電磁波を微弱無線レベル以下に抑えられたことを確認した」(住友電気工業システムエンジニアリング事業部PLC事業開発の徳丸亀鶴部長)。

 住友電工は国内での利用が認められ次第,同製品を市場に投入する計画。まずは集合住宅向けFTTH(fiber to the home)サービスの宅内配線に利用されることが予想されている。このため「競合するVDSL(very high bit rate DSL)や無線LANなどと戦える価格に設定したい」(徳丸部長)と言う。

(山根 小雪=日経コミュニケーション