米ルーセント・テクノロジーは,2005年上旬から日本での携帯電話関連機器の販売に力を入れると表明した。その一環として現在,携帯電話事業への新規参入を目指すイー・アクセスと共同で1.7GHz帯での第3世代携帯電話の実証実験を行っている。携帯電話でどのようなサービスが提供できるかは,バックボーンに利用する機器に左右される。そこで米ルーセント・テクノロジー モビリティ・ソリューション・グループのシンディー・クリスティ最高業務責任者に,同社の製品の特徴と今後の携帯電話サービスの展望について聞いた(写真)。

――御社の製品の特徴は。

 音声,データ,映像といった様々なアプリケーションを一つのIPネットワークに統合する「IP Multimedia Subsystem(IMS)アーキテクチャ」を採用している点だ。さらに固定通信と移動通信のネットワークを統合できる。

 現在,W-CDMAやCDMA2000などの第3世代携帯電話,ADSL(asymmetric digital subscriber line)のような固定ブロードバンド,無線LANアクセス・サービスなど様々なアクセス網が存在する。従来はアクセス網ごとにバックボーン・ネットワークを構築していたが,当社の製品を使えば全アクセス網を一つのIPベースのバックボーンに収容できる。

 通信事業者は高度なサービスが提供できるようになるうえ,ネットワークの運用コストが削減できる。特に固定通信と移動通信の両方を手掛ける事業者は,設備が統合できるためコスト削減効果が大きい。

――エンドユーザーにはどういったメリットがあるのか。

 固定のブロードバンド通信と携帯電話などのワイヤレス通信をシームレスに扱えるようになる。例えば電子メールやボイス・メールのメール・ボックスを,固定通信と携帯電話で一つに統合できる。

 また我々は「Push to Video」という使い方を提唱している。ユーザーがワンクリックするだけで,パソコン,携帯電話,PDA(携帯情報端末)など様々な端末で同じ動画を同時に見られる仕組みだ。端末ごとに通信速度や画面の大きさが異なるが,それぞれに応じたビットレートやサイズの動画に自動で変換して配信できる。

 こうしたサービスが可能なのは,バックボーンが共通のIP網であることと,「SDHLR」という装置でユーザー情報を管理するためだ。SDHLRでは,ユーザーが利用する端末と通信方式を常に管理する。Web閲覧時や映像,音声を送る場合は,端末や通信方式に適したデザインやデータ量で送るよう配信サーバーなどに命令を送る。

――日本市場への取り組みは。

 これまで以上に戦略的に重視していくつもりだ。特に携帯電話では,規模もさることながら技術的に世界の先端にある。日本市場で新しい技術の研究開発や導入を進め,それを世界中に広げていきたい。

 固定電話網のIP化は多くの会社が進めている。この移行時に当社の製品を導入してもらいたい。IMSアーキテクチャによる当社の製品を使うと,固定網と移動網でバックボーン設備を共通化できる。そのため固定網をIP化すれば,移動網は段階的にIPバックボーンに移行可能だ。

 この時期に日本市場に力を入れ始めた理由は,HSDPA(high speed downlink packet access)などの高速な携帯電話データ通信規格やIMSアーキテクチャの準備が整ったから。携帯電話事業への新規参入事業者の登場と時期が重なったのは偶然だ。だが大きなチャンスだと思っている。今まで日本における携帯電話関連機器の売り上げは,日本法人の総売り上げの1/4に過ぎなかった。これを総売り上げの大部分を占める水準まで引き上げたい。