総務省は2月23日,電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第2回会合を開催した。電力線通信は10k~450kHzを使う低速タイプが国内で既に実用化されている。今回議論しているのは,2M~30MHzの高周波数帯を利用する高速電力線通信。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送など,他の無線が利用しているため,干渉問題が懸念されている。

 第2回となる今回は,電力線から漏れ出す電磁波の影響を受けるアマチュア無線や電波天文,短波放送など各無線通信への許容値を,高速電力線通信推進協議会(PLC-J)が提案した。例えば,最大周波数が25.67MHzの電波天文で44.3dBuV/mといった具合である。

 この提案には,アマチュア無線連盟や電波天文などの構成員から,計算方法などに対して厳しい意見がぶつけられた。研究会の座長を務める東北大学電気通信研究所教授の杉浦行氏は,PLC-Jの提案にも不足な点はあるとしながらも,「(反対勢力の激しい反応を予測しながらも)勇気を振り絞ってこういった提案を出したことには敬意を表す」とコメント。次回以降に提案のブラッシュアップを求めた。

 ある構成員によれば,世界各国で高速電力線通信の規制緩和に向けた議論が展開されているが,「PLC-Jが提示した許容値の提案は“世界初”の試み」だという。だとすれば,杉浦座長のコメントもうなずける。次回会合からは,今回提示した“たたき台”に許容値の議論を詰めていくことになりそうだ。

 このほか,国際的に漏えい電磁波の測定方法と許容値を規定する「CISPR」が検討状況を説明。アマチュア無線連盟や短波放送の日経ラジオからは,測定条件などへの要望が出された。次回会合は3月18日の予定である。

(山根 小雪=日経コミュニケーション