総務省は2月22日,電話のサービスを全国ひろくあまねく提供する「ユニバーサル・サービス」の制度見直しについて議論する会合を開いた。大手通信事業者と業界団体,消費者団体が出席。制度に対する各社・各団体の考え方を述べた。通信事業者は,KDDI小野寺正社長,日本テレコム倉重英樹社長,パワードコム中根滋社長,ボーダフォン津田志郎社長とトップが顔をそろえた。

 各事業者とも義務となる対象サービスの見直しについて強調。現在は東西NTTの加入電話,公衆電話,緊急通報──の三つのサービスが対象となっている。

 これに対してKDDIの小野寺社長は「携帯電話がエリアを限定して補完するのは可能。音声としては同じ機能であり,複数の手段で維持していくべき」。ボーダフォンの津田社長も「固定電話への依存を前提とした既存の制度からの移行が必要」との考えを示した。

 固定系事業者のパワードコムの中根社長も「電話を議論するのであれば,携帯電話も議論の対象だろう。時代に応じて再度定義をすべき」と,もはや固定と移動を分ける意味が薄れていることを強調した。

 もう一つ大きな議論がある。ユニバーサル・サービスを提供するためのコストを負担する基金制度についてである。現状は東西NTTの不採算地域の赤字を採算地域の黒字で補てんし,それでも穴埋めができないコストを通信事業者全体で負担するという仕組みである。

 ところが環境が変わった。昨年12月に日本テレコム,今月はKDDIがドライ・カッパーを利用した直収電話に参入。東西NTTの加入電話と真っ向から対抗している。このため日本テレコムは「東西NTTによる競争対抗上の値下げの結果(採算地域の黒字幅が縮小し),基金が発動し赤字を補助するという問題が起こりうる」(倉重社長)と主張。ユーザーが複数事業者のサービスを選択できるような競争地域は,基金の対象から外すべきだと主張した。

 ボーダフォンの津田社長も「人口で98.7%のエリアは携帯電話がカバーできている。ユニバーサル・サービスの対象は残り1.3%の固定電話に頼らざるを得ない地域に限定すべき」と,対象エリアの絞り込みを提案する。

 もっともエリアの限定については,「競争地域であっても非競争地域であっても,国民がいる限りユニバーサル・サービスで支援していくべき」(パワードコムの中根社長)との意見も根強い。

 なお,会合には電話のユニバーサル・サービスの責務を負っている,NTT東日本の有馬彰取締役経営企画部長と,NTT西日本の佐々木崇取締役経営企画部長がオブザーバーとして出席した。

 総務省は議論を秋までに収束させ,2006年4月にも運用を始めたい考え。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション