VoIP推進協議会の志岐紀夫会長(三菱電機情報ネットワーク社長)が、「無線LANから始まったモバイルIP電話が携帯電話の領域を侵食する可能性もある」と予測した。日経BP社主催のITソリューション展「NET&COM 2005」での「IP電話からモバイルIP電話へ」と題したセミナーで披露した。

 予測の根拠は、無線IP電話とも呼ばれるモバイルIP電話の技術が急速に進んでいること。具体的には、現在の無線LANを拡張し,より高速で広域エリアをカバーするためのIEEE 802.16やIEEE 802.20といった技術開発が活発で、これらの無線技術を使えば,モバイルIP電話の利用エリアは現在の携帯電話並みに広がることになる。モバイルIP電話の製品も昨年から続々と登場している。NET&COM 2005ではアイコムやネットツーコムがそれぞれ製品を出展した。

 予測の確度が高いことを示すため志岐会長は「固定電話が汎用機なら,携帯電話はミニコンで,IP電話はパソコンだ」との例を挙げる。汎用機やミニコンはパソコンに押され,ミニコンにいたっては消滅したように、携帯電話も消滅するというわけだ。現時点では、モバイルIP電話のユーザー数は携帯電話に比べ微々たるものながら、IP電話関連企業が集まるVoIP推進協議会会長としては「モバイルIP電話優勢」に大きく期待を膨らませる。

 ただし、志岐会長は「携帯電話がIP化してモバイルIP電話の領域を侵食する」とのシナリオを完全には否定できないとする。携帯電話のIP化は既定路線で、そのための技術仕様「IMS(IPマルチメディア・サブシステム)」を、第3世代携帯電話の仕様策定団体「3GPP」が議論している。IMSで使う電話の呼制御プロトコルは,現在のIP電話が使うプロトコルと同じ「SIP(session initiation protocol)」なので,IP化された携帯電話がモバイルIP電話を吸収する可能性も少なくはないからだ。

(武部 健一=日経コミュニケーション)