岐阜県は1月25日,世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」で知られる白川村において,かねてから実験中の無線インターネット・アクセス・システムを公開した(写真右)。同県の情報産業室が地域情報化のラスト・ワンマイル対策として実施したもの。発表会ではノート・パソコンを使った無線アクセスのほか,IP電話機やテレビ電話端末によるデモンストレーションも行った。

 今回の無線インターネット・アクセス・システムの特徴は無線LAN(IEEE 802.11b)によるメッシュ・ネットワークを構成したこと。データを複数の基地局がバケツ・リレー方式で運ぶ。基地局などに障害が発生しても,別の基地局に自動的切り替わり,通信を継続できる。またすべての基地局に光ファイバなど上位回線を接続する必要が無いため,システム構築の期間や費用が抑えられるというメリットがある。

 具体的には白川村内に全部で11の基地局(アクセス・ポイント)を設置した。このうち光ファイバにつながる基地局は小学校,中学校,診療所に設置した3カ所。既設の予備心線を利用した。これらの基地局を主局として,残りの8基地局は従属局となり,主局を経由して上位回線とつながる。従属局は一定時間ごとに各主局との接続品質を監視しており,最適な主局を自動的に選択する機能を持つ。

 この代償として,従属局を経由するとスループットが低下する。主局にアクセスする際には最大5Mビット/秒が見込めるが,その直下の従属局では半分の最大2.5Mビット/秒に落ちる。ホップ数が増えるほど,スループットは半減していく。

 基地局には米トロポスの製品を採用した。従属局は防災鉄柱や消防用ポール,半鐘などに設置され,積雪対策からアンテナを下向きにしている(写真下)。


 実験期間は1月末までを予定。その後の事業化は今のところ未定である。システム構築は第3セクターのブイ・アール・テクノセンターが担当した。構築費用は250万円。

(加藤 雅浩=日経コミュニケーション