「今後の携帯電話市場の更なる発展のためには,国家戦略として携帯電話市場をどう育成していくかという議論が必要」と語るのは,野村総合研究所の北俊一・コンサルティング第三事業本部情報・通信コンサルティング二部上級コンサルタント。1月18日に東京都内で開催したセミナーで講演した。

 北コンサルタントは「携帯電話市場の発展のおかげで,日本の産業競争力は飛躍した」と見る。具体的には,携帯電話端末に搭載されるモバイルカメラ,液晶,半導体,電池などが普及することで,関連メーカーの技術力が世界的にも優位な状態に発展したと説明。「携帯電話機に搭載されることで,コストが一気に下がり,結果として携帯電話機以外の商品にも搭載されるケースが多々ある」(北コンサルタント)。

 一方で,「携帯電話市場は日本を代表するにも関わらず,産業としての明確なビジョンが存在しない」と指摘。「今後も携帯電話の成長を維持するためには,産業として携帯電話をどう位置づけ,どのように育成するべきかを議論する場が必要ではないか」との問題を提起する。

 野村総研の調査で予測では,現在の携帯電話市場は約10兆円。これを,5年後の2010年には20兆円規模に拡大可能であると言う。「新しいコミュニケーション手段の創出による市場拡大で約3兆円,端末などのデバイス市場拡大で約3兆円,モバイル広告市場で1兆円。さらに法人市場の拡大で3兆円の拡大が見込める」(北コンサルタント)。

 「2004年はNTTドコモが決算で初の減収減益予想を立てるなど,これまで右肩上がりで成長してきた市場の転機となった。その意味で,2005年は携帯電話市場が再び拡大するか,縮小するかの節目の年」と北コンサルタントは見る。「2006年には,携帯電話の番号ポータビリティや新規参入事業者の誕生など市場が再び激しい競争状態になることが予想される。その意味で2005年は日本の産業として携帯電話市場の意味や方向性を明確にすべき重要な時期ではないか」と問いかける。