総務省は12月17日,ブロードバンドが使えないデジタル・デバイド問題の解消を目指す「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」の中間報告案を公開し,意見募集を開始した。同研究会は6月から,地方公共団体の事例や通信事業者,総務省による調査結果などの発表を交えて,デジタル・デバイドの現状や解消策を5回にわたって議論。今回,中間報告となる「ブロードバンド・ゼロ地域 脱出計画~光ブロードバンド・コミュニティへ向けた地方公共団体のための指針案~」を作成した。

 指針案では,ブロードバンド普及の現状や整備の必要性,地方公共団体や通信事業者の役割,整備にあたって生じてくる課題をまとめた。ブロードバンドが使えることで得られる経済効果と,使えないことで生じる負の効果は,ともに今後増大していくとの予測データも紹介している。ブロードバンド接続サービスの種類別の普及状況,ブロードバンド整備の事例や都道府県や市町村が実施している補助事業などのデータも盛り込んだ。

 例えば,全国3123市町村のうちFTTH/ADSL/CATVいずれかのブロードバンド接続サービスが利用できる自治体は88.9%にあたる2774。意外に多く感じられるかもしれないが,詳細を見ると人口規模が少ない自治体ほど普及率が下がる。また市町村の全世帯がブロードバンドに加入可能な市町村をサービス別に見ると,ADSLが約51.3%,CATVインターネットで8.1%,FTTHは4.6%。“域内デジタル・デバイド”が起こっていることもうかがえる。

 デバイド解消策としては,指針案ではFTTHの整備が望ましいとしている。だが早急にできるところから空白地域をなくすことが重要なため,ADSLなどの緊急導入も重要な選択肢と補足した。ブロードバンドの整備は“民間主導”が原則だが,国と地方公共団体,通信事業者が連携して取り組むことが重要。またニーズの把握や通信事業者との調整などをする地方公共団体の役割は大きいと指摘している。

 「ブロードバンド・ゼロ地域 脱出計画」への意見募集は2005年1月17日17時まで。1月24日に開催予定の第6回会合で,寄せられた意見を検討して中間報告を確定する。その後は,国としてのブロードバンド普及策などを議論していく。研究会の開催期間は2005年夏までの予定で,結論によっては2006年5月末に期限が切れる「電気通信基盤充実臨時措置法」(民間事業者に対する国の支援策を規定)の改正・延長などもあり得る。

 総合通信基盤局高度通信網振興課の玉田康人課長補佐は,「指針案を見てもらい,地方公共団体に関心を持ってもらいたい。通信事業者には地方公共団体がどういった活動をしているかを知ってもらい,情報提供などで協力をお願いしたい」と説明した。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション