情報通信審議会は12月15日,電話を全国ひろくあまねく提供するための制度「ユニバーサル・サービス」を議論する委員会を総務省で開催した。11月26日に麻生太郎総務大臣から同審議会に検討を要請する諮問がなされたことを受けた動きである。

 初回となる今回は,制度が決まった背景や大枠の論点が示された。総務省は議論を2005年秋までに収束させ,2006年4月にも運用を始めたい考え。

 総務省は「競争が進展した状況をふまえて,大きな見直しをお願いしたい」(有冨寛一郎総合通信基盤局長)との考え。対象となる電話サービスや事業者の見直しが議論の大きなテーマだ。「前回は見送ったが携帯電話はどうか。固定でも携帯でもなにか手段があればいいという考え方もある」(有冨局長)として,固定電話という枠を取り払った議論が進む公算。またコストを補てんする基金制度も議論の対象である。

 固定電話と携帯電話のサービス融合が進む中,委員会の動向は通信事業者の戦略に大きな影響を与えていきそうだ。

 ユニバーサル・サービスとは,特別な理由がない限りすべてのユーザーが合理的な料金で電話サービスを導入できるようにする制度。現在の対象となっているのは,ライフラインとして重要とされている加入電話と公衆電話,緊急通報。一方で,通信事業者にとっては設置・運用のコストが負担となる。そこで,これを支えるための基金制度がある。

 ところがユニバーサル・サービスの義務を唯一負うNTT東西地域会社は,その基金制度に大きな不満を抱いている。具体的には,基金から資金を給付する条件や方法についてである。これに加えて,義務を負わない日本テレコムやKDDIが,ドライ・カッパーを利用した新型固定電話へと続々参入してきたため,NTT側が見直し要求の姿勢を強めていた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション