写真1 アリババ・ドットコムのマー社長

 アリババ・ドットコムは中国最大のBtoB型マーケット・プレイスを運営する。現在では中国の中小企業が海外向けに国際商取引を実施する「Alibaba International」,中国国内のBtoB取引サイトである「Alibaba China」,そして消費者同士のオークション・サイト「Taobao」(タオバオ,淘宝)を展開。既に3サイトを合わせて800万会員を突破しており,12月末で900万会員を見込んでいる。ジャック・マー(馬雲,写真1)社長に中国・杭州のオフィスで今後の戦略と日本進出計画を聞いた。(聞き手は松本 敏明=日経コミュニケーション

--日本への進出計画は。

 日系の企業が中国法人を通じてAlibaba Chinaを利用する機会が増えている。2年前から日本語の画面を提供してきたが,2005年には本格的に日本進出を予定している。

 日本進出はBtoB分野で考えている。プランは二つある。一つはjpドメインを持つ日本向けサイトを作ること。もう一つは日本の企業がAlibaba InternationalまたはAlibaba Chinaに参加しやすくすること。どちらにしても日本のパートナ企業が必要になる。

 日本企業が我々のサイトを利用すると,日本の企業を欧州の企業に紹介できるという価値を提供できる。中国の企業に紹介することも可能だ。

--日本企業がAlibabaに参加している割合は少ないようだが。

 二つの理由が考えられる。一つは日本企業が現地法人を通じて我々のサイトを使うと,日本企業としてはカウントされないということ。もう一つは日本の中小企業はネット経由のビジネスには慣れておらず,英語サイトの利用にも抵抗があることだ。

--Taobaoは中国のオークションで「イーベイ・チャイナ」と競合していると聞いた。

 売り上げはイーベイ・チャイナが上だが,ユーザー数の伸びや商品点数では我々が上回っている。イーベイ・チャイナに勝つのは時間の問題と考えている。それよりも米イーベイに勝つことが目標。中国のネットワークが成長するのはこれから。アリババが米イーベイに勝てる可能性は十分にある。


写真2 アリババのコール・センター
徹底した成果主義でユーザーをサポートしている'

 現在Taobaoはユーザーに無料でサービスを提供している。将来は有料化する予定もあるが,無料か有料かは問題ではない。大事なことはユーザーに対するサポート(写真2)。これがあるから,今後の成長に自信を持てる。ネットワーク技術は,外部から調達できる道具であると考えている。

--個人間の取引では違法な商品を扱うなどの懸念もある。

 犯罪など現実社会にあるものはバーチャルにもあると考えるべきだろう。しかしユーザーIDのあるバーチャルな世界では,現実よりも管理しやすい。しかも中国よりも進んでいる日米で電子商取引にかかわる様々な前例があるため,これを基に対策をとる。中国の警察や財務局と連携して,ネット上の商取引や決済のルールを決めていきたい。