携帯電話事業での参入を目指しているソフトバンクBBは12月6日,800MHz帯の周波数割り当て方針案を不服として,総務省を相手取って起こした行政訴訟の一部を取り下げると発表した。

 ソフトバンクBBが取り下げたのは,東京地方裁判所に対して2004年10月13日に申し立てた(1)総務省が策定した800MHz帯の割り当て方針案の執行停止,(2)800MHz帯の割り当てに関する総務省とNTTドコモ間,総務省とKDDI間の交渉記録の処分禁止--の仮処分。

 仮処分取り下げの理由について孫正義社長は,「法廷の場での総務省の見解から,訴訟の必要性はないと判断した」と説明した(写真)。ソフトバンクBBと総務省は東京地方裁判所の民事法廷に出席。法廷で総務省は「策定した800MHz帯の割り当て方針案には,正式な方針となった後でも何ら法的拘束力はない」と回答した。その上で,「ソフトバンクBBも800MHz帯の免許申請は可能との説明をされた」(孫社長)。

 これを受けて,ソフトバンクBBは6日付けで急きょ800MHz帯の無線局免許の取得を申請。「10時22分に特に問題もなく受理された」(ソフトバンクBBの宮川潤一取締役)。

 もっとも免許申請が受理されたからといって,ソフトバンクが800MHz帯で周波数の割り当てを受けられるかは不透明。同周波数帯は総務省が再編を進めており,「新規参入の余地はない」との立場を続けているからだ。800MHz帯を利用しているNTTドコモやKDDIからも「すぐに新規事業者には空けられない」という声があがっている。

 800MHz帯を含む周波数の再編方針については,現在総務省が「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」を開催中。携帯電話事業の新規参入や周波数の有効利用方法などについて関係者を交えた熱論を繰り広げている。検討会の場でも,ソフトバンクBBと既存携帯電話事業者の800MHz帯に対する考え方は,平行線をたどったままである。

 だが孫社長は「総務省がこれまで拒み続けてきた800MHzの免許申請を受理したことだけでも歴史的なこと」と説明。「今後も,再編のおわる2012年からといわず,早期に800MHzを利用できるよう主張していきたい」と800MHz帯周波数の獲得に自信を見せた。