総務省は11月29日,5GHz帯に新たな無線LAN用の周波数帯を割り当てるための技術的条件についての一部答申を公開した。この結果,現行のIEEE 802.11a(11a)機器が将来出荷される11a機器とつながらなくなる可能性が出てきた。現在IEEE 802.11aで利用している5.15G~5.25GHz帯について,チャネルの周波数を変更して国際標準に合わせるためだ。今後は制度面について検討を進め,2005年5月をメドに新たな周波数帯を利用できるよう省令を改正する。

 省令を改正する2005年5月からは,メーカーは原則として新しいチャネルに対応した機器を出荷することなる。新しいチャネルに対応した機器は,周波数が異なるため現行の機器と接続できない。またユーザーがファームウエアをアップデートして機器が利用できる周波数チャネルを変更することは,現行の電波法では許されていない。

 そのため現行の11aによる無線LANネットワークを運用している企業は,将来は無線LANカードなどの子機やアクセス・ポイントの増設や交換ができなくなる可能性がある。ただし既に個人や企業などユーザーが保有している11a機器は省令の対象外のため,保有している機器を入れ替える必要はない。

 総務省は現行チャネル対応製品の出荷をいつまでにするかといった具体的な経過措置については,今後省令案の形でパブリック・コメントを募集して決定する。さらにファームのアップデートで新しいチャネルに移行できるよう,制度を改正する予定もある。少なくとも2005年5月時点での現行チャネル対応製品の出荷停止までは予定していない。

 なお今回の答申では,5.25G~5.35GHz帯(4チャネル)と5.47G~5.725GHz帯(11チャネル)の計355MHzを11a無線LANに新規に割り当てることも発表された。今回の発表が「一部答申」となっているのは,IEEE(米国電気電子技術者協会)で標準化が進められている次世代の無線LAN規格「IEEE 802.11n」(11n)の動向に対応するため。11nの標準規格が固まり次第,今回公開された技術的条件も見直していく。


日経コミュニケーション編集部からおことわり 11月30日に総務省から指摘を受け,11月29日に掲載した原稿の一部を修正・追加いたしました。