総務省は11月25日,「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第4回会合を開催した。今回は,現在総務省が再編を進めている800MHz帯の周波数の在り方について,新規参入を目指す事業者や携帯電話事業者各社が意見陳述した。

 出席者は前回に引き続き,NTTドコモ,KDDI,ボーダフォンの携帯電話事業者とソフトバンクBB,イー・アクセス,平成電電,アイピーモバイルの計7社。「時間が足りない」として意見陳述の時間を15分から20分に延長させるほど,各社とも熱の入った主張を展開した(写真)。

 注目を集めたのは,800MHz帯への参入を強烈に意思表示しているソフトバンクBBと,現在同帯域を利用して携帯電話サービスを提供しているKDDI/NTTドコモの意見陳述。先陣を切ったのは,ソフトバンクBBの孫正義社長だった。冒頭からいきなり「800MHz帯は電波の伝播効率が良いのは,これまでのNTTドコモ,KDDIの発言でも明らか」と既存の携帯電話事業者をけん制。「競争条件を公正に保つためにも新規参入事業者と既存の携帯電話事業者で利用する周波数帯を同じにすべき」(孫社長)と主張した。

 孫社長は「800MHz帯はあくまでも再編であり,新規周波数用の割り当てではない」という総務省の方針にも改めて反論。「NTTドコモとKDDIが800MHz帯と2GHz帯にそれぞれ半分ずつユーザーを収容すれば,800MHz帯に新規参入できる空きは作れる」(孫社長)と主張した。800MHz帯と2GHz帯の周波数帯で同時に利用できる「マルチバンド」に対応した米モトローラの端末も披露。「チップのコストは3米ドル未満であり,事業者負担で十分まかなえる。マルチバンドを使うのはまさに世界の常識」と豪語した。

 これに猛反対したのがKDDIの小野寺正社長。「800MHz帯の再編は大勢の関係者が何年もかけて検討してきた国家プロジェクト。その中に途中から入りたいというのはありえない」と反論した。

 KDDIは800MHz帯が複数の無線システムが入り組むことになった経緯を説明。KDDI自身も港湾電話サービスなど,過去に立ち行かなくなったサービスを引き継いだ結果,800MHz帯を10MHz幅,3MHz幅,2MHz幅を“飛び石”状態で利用することになったと訴えた。「再編は,こうした過去の歴史の課題を解決するための取り組み」(小野寺社長)。さらに「周波数再編には5000億円程度の投資が必要。これはKDDIの1年半の経常利益が吹っ飛ぶことを意味する。本音を言えばKDDIもやりたくはないが,日本の将来を考えれば必要なこと」(小野寺社長)と説明した。

 その上で,「再編のためにはどこかに空きを作る必要がある。そのために,我々が停止したPDC(personal digital cellular)サービスで利用していた周波数を空け,そこを起点に再編を進めている。まさにパズルと同じ」(小野寺社長)と主張。「そこに途中から(ソフトバンクが)入りたいというのは無理な話」(小野寺社長)と訴えた。

 こうした事情から,孫社長が強調するマルチバンド端末で800MHz帯と2GHz帯を利用する意見には,「1年やそこらで既存ユーザーから端末を回収して入れ替える,というのはありえない」と声を荒げた。

 NTTドコモの中村維夫社長も小野寺社長に同調。「800MHz帯の再編は将来の周波数を空けるためのもの。すぐに空きができるわけではない」(中村社長)。マルチバンド端末についても「費用がかかるのはチップだけではない。1端末あたり1500円は必要」と孫社長の主張に反論した。さらに,「公正競争の確保については否定しないが,新規参入事業者の設備投資が数千億円程度で済むのは,我々が1兆円以上かけて投資したから。先行者のリスクも考慮して欲しい」(中村社長)と訴えた。

 各社は次回の会合(12月14日開催予定)で再び意見交換会を実施する。今後の携帯電話の行方を占う重要な議論が続く。