NTT持ち株会社の和田紀夫社長は11月10日,グループの「中期経営戦略」を発表した(写真)。発表の目玉は,光アクセスとフルIP化した次世代ネットワークの構築。既存の加入電話網も,この次世代ネットワークに切り替えていく。NTTの和田社長は,2010年までに3000万世帯が光アクセスと次世代ネットワークを利用するという構想を披露した。英国のBTや,国内のKDDIに続き,とうとうNTTも固定電話網のIP化を本格的に宣言した。

 説明によると,2010年までが次世代ネットワーク構築の第1ステップ。この間は,既存の加入電話網と次世代ネットワークが並存する。2010年以降の第2ステップに,加入電話網を次世代ネットワークへ完全に切り替える。「ユーザーの状況や競合事業者の意見,社会的なコンセンサスを見て,第1ステップ中に完全切り替え時期を決断する」(和田社長)。

 次世代ネットワークでは,光波長多重技術を活用したバックボーンを構築。サービス提供を目指し,光アクセス回線を局側で収容するエッジ・ノードや,折り曲げが可能で工事が容易な光ファイバの開発を進める。

 2010年までの光アクセスと次世代ネットワークへの投資額は累計で5兆円。現状では固定通信事業に年間8000億~9000億円の投資をしている。新世代ネットワークへの投資額も年額では,現状とほとんど変わらない水準に抑える方針だ。また,次世代ネットワークを活用したソリューションやトラフィックに依存しない事業により,2010年までに5000億円の売り上げ増を目指す。併せて,固定通信事業のコストを8000億円削減する計画も進める。

 NTTグループが次世代ネットワーク構築を進める上で,和田社長が「何とかお願いしたい」と強く強調したのが,光ファイバの開放義務や,NTTドコモとグループ内で一体化したサービスを提供できないという,NTT東西地域会社への規制の見直し。

 「固定電話と携帯電話の融合が進み,電話網もIP化すると競争環境が変わるはず。次世代ネットワークの研究開発や投資にはお金もかかりリスクもある」(和田社長)。NTT持ち株会社や東西NTTは,従来から規制撤廃を求めてきたが,今後はより一層強く求めていく意思を示した。こうした主張には競合事業者の反発は必至。次世代ネットワークの構築計画が順調に進むかどうかは,規制撤廃の動向にも左右されそうだ。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション