「倒壊した3店舗も含めて,すべてのネットワークは生きていた」──。

 新潟県の中越地方を基盤とする大手スーパー・チェーンの原信のネットとシステムを管理している原興産の情報システム事業部内藤裕部長は,震災後の状況をこう語る(写真下左)。

 原信は店舗の半数の22店が被災。そのうちの3店は建物の倒壊や地盤崩壊によって,取り壊さざるを得なくなった(写真上,小千谷の駅前店)。しかし内藤部長が,スタッフと共に地震の直後からIP-VPNのネットワークと店舗ルーターの稼働状況をpingコマンドで点検したところ,被災地域の全22店舗の通信回線と機器の正常稼働を確認した。建物が崩壊するというほどの強い揺れが生じても,通信回線は生きていたのである。

 回線は頑強だったが,サーバーの管理で課題があった。内藤部長は「サーバーの震災対策が十分でなかった」と反省する。長岡市にある情報システム室では,西側の壁にラックを置いてサーバーを収容していたものの,ほとんど固定していなかった。

 今回,情報システム室のある建物は南北に大きく揺られたため,「サーバーがラックから飛び出すのを免れた」(内藤部長)。原信の経営企画部業務企画担当の我伊野治氏は「もし東西に揺れていたら,大事な業務データが喪失していたかもしれない。たまたま揺れの方向に助けられた」と胸をなでおろす(写真下右)。現在,サーバーなど機器をガム・テープやビニール・テープでラックに応急的に固定(写真中)。長引く余震に備えている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション