新潟県中越地震による通信事業者の基幹ネットワークや企業向け通信サービスへの影響は,さほど大きくなかったことが本誌の調べで分かった。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)によれば,「回線間で,う回措置を取るなどしているため基幹ネットワークは問題なく運用を続けている」(広報室)という。ただし,同社が他の通信事業者に貸し出している光ファイバのケーブルが,2本ほど切断されたケースがあった。

 KDDIも基幹ネットワークには大きな影響がなかったようだ。同社は高速道路の関越自動車道と北陸自動車道の両ルートに沿って光ファイバを敷設しているが,「両回線間で互いにう回できるため,基幹ネットワークの伝送に大きな問題は生じていない」(広報部)という。

 このように影響が最小限に抑えられた理由には,(1)基幹ネットワークの経路にう回路を設定している,(2)NTTビルが強固だった──ことが挙げられる。各通信事業者がネットワーク機器を設置するNTT東日本の電話局の建物が頑丈で,停電した地域でも予備電源がきちんと作動した(写真)。震源にほど近いNTT東日本小千谷ビルも,建物の周囲に多少の段差ができた程度だという。

 一方,電力系通信事業者は,NTT東日本の局舎に頼らず通信インフラを構築している。電力会社の本社・支社などに交換局を置くケースが多い。

 新潟県をエリアとする電力系の東北インテリジェント通信は,被災地およびその近郊に長岡,柏崎,十日町,六日町の4局を持つ。建物や設備の被害はなかったものの,各地域で一斉に停電が発生。予備電源をスタートさせると同時に,新潟市や周辺県から電源車を向かわせた。「各局とも予備の電源が持続している間に,東北電力の商用電源が復帰したため大きな問題は起こらなかった」(営業企画部)。

 もちろん通信サービスが稼働していても,ユーザーの拠点で停電が発生したり,ルーターやアダプタなどが破損すれば企業の通信ネットワークとしては機能しなくなる。KDDIによると,「当初は数十のユーザーが停電で使えない状態に陥ったが,今は約3分の2のユーザーが復旧している」(広報部)という。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション