100Gビット/秒を超える光通信用チップ,遠隔地から設定変更が可能なOADM(光挿入分岐装置)用ボード,光信号のまま波長でルーティングする伝送システム――10月15日にNTT先端技術総合研究所が開催した「NTT R&D フォーラム2004 in 厚木」では,次世代の光通信に向けたチップやボード,システムの技術展示が見られた。

 チップの高速化は電気的限界のため,40Gビット/秒を超える高速化が難しいとされている。今回NTTは100Gビット/秒超の動作が可能な化合物半導体技術(InP)を使ったトランジスタを展示した(写真右)。具体的には75GHzの光信号を入力し,その繰り返し周期を半分にする1/2分周回路から150GHzの出力が得られることを確認した。「100Gビット/秒の光通信システムは研究レベルの部品はそろった。ゴー・サインが出れば2年で実用化できる」(説明員)とする。実用化への課題は,波形からクロックを抽出/再生するCDR(clock data recovery)回路と,伝送路上で生じた分散を補償する回路のチップ化とする。

 電気信号に変換せず光信号のまま送る,いわゆるフォトニック・ネットワーク関連では再構成可能なOADMボードを初展示した(写真中)。メトロ(都市圏ネットワーク)への応用を想定している。ここでいう再構成可能とは,ADMで挿入あるいは分岐する波長を遠隔地からコマンド一つで変更できること。これまではわざわざ出向いて手動で変更する必要があった。今回開発したボードでは最大16波長を扱える。ボード化したことで装置の小型化につながる。個別部品を組み合わせて実装する場合に比べて1/2~1/3のサイズになる。

 同じくフォトニック・ネットワークの要素技術として波長ルーティングがある。以前からNTTはAWG-STARと呼ぶスター型の光ネットワークの開発を進めている。任意の波長を任意の光ファイバにルーティングすることで,スター型の構成でメッシュ型と同等なN対N接続を可能にする。ただしこれまでのAWG-STARは,構内など比較的近距離の検証にとどまっていた。今回のフォーラムでは,会場となった厚木と武蔵野の研究開発センターを結ぶ実験用ネットワーク「GEMnet2」にAWG-STARを適用,HDTV(高品位テレビ)映像をリアルタイムにやりとりして見せた(写真下)。

(加藤 雅浩=日経コミュニケーション