UHF帯を利用する無線IC(RFID:radio frequency identification)タグの周波数割り当てと技術仕様を決定する「UHF帯電子タグシステム作業班」の第5回会合が10月15日に開催された。

 割り当てを検討している950M~956MHz帯の両側の周波数帯は,2011年以降に900MHz帯の第3世代移動通信システム「IMT-2000」が利用する予定。このため無線ICタグ・システムのリーダー/ライターが出す電波が,携帯電話システムと電波干渉を起こさないことが求められる。これまでの会合では,周波数帯域外に漏れ出す電波「スプリアス」を巡って,NTTドコモやKDDIなど携帯電話事業者と,UHF帯無線ICタグ陣営の意見がぶつかっていた。しかし今回の会合でようやく落としどころが見えてきた。

 今回の会合で議論されたのは,950M~956MHz帯の6MHz幅のうち,中央の2MHz幅だけをUHF帯無線ICタグで利用して,両側の2MHz幅は事実上のガードバンドにしようという方法だ。このやり方なら,出力は維持したままスプリアスを大幅に落とせる。干渉を受ける側のNTTドコモも,「2MHz幅だけしか使わないのであれば,タグ側が要求する出力を出しても干渉は回避できる」(北川真清・IP無線ネットワーク開発部無線基地局担当・担当部長)としている。

 スプリアスを抑えるには,今回のやり方以外に出力そのものを落とす手があった。だが出力を落としてしまうと通信距離が短くなってしまう。既に実用化されている2.45GHz帯を使う無線ICタグに比べて,UHF帯の最大のメリットは通信距離が長いこと。出力を落とすと,そのメリットが失われてしまう。

 ただし利用する周波数帯域幅を狭くすると,通信速度や無線ICタグのリーダー/ライター間での干渉発生などが新たな問題として生じてくる。今回の作業班は他のシステムとの問題だけがテーマなので詳細な解決方法は議論しないが,今後,電波産業会(ARIB)などで綿密な検討が必要となりそうだ。

 総務省は今回の作業班で報告書のたたき台を提示した。残された作業班はあと2回の見込みで,次回会合は10月28日の予定。

(山根 小雪=日経コミュニケーション