本多エレクトロンは9月21日,電力線通信(PLC:power line communication)の実証実験結果を公開した。2年前に電力線通信の実用化が検討された時点よりも漏えい電磁波を当社比で1/50にまで抑えた。実験は本多エレクトロンの花巻工場で8月23日に開始した。「花巻工場の周りは田園で環境雑音レベルはかなり低い。それでも,環境雑音レベル以下まで漏えい電磁波を抑えることに成功した」(本多エレクトロン)という。

 今回の実験では,本多エレクトロンがチップ開発から自社で行った電力線モデムの試作機を使用した。試作機では,電力線モデム専用にトランスや送受信のアナログ部を開発。送信レベルを落としつつ,受信感度を上げることで漏えい電磁波を低減した。また,漏えい電磁波の発生原因であるコモンモード電流を抑えるための専用部品を電力線通信用に開発した。

 本多エレクトロンは今後も製品開発を続け,2005年3月まで実験を継続する。今後は,電源フィルタや送信変調部,受信雑音キャンセル部などのデバイスそれぞれに漏えい電磁波の低減技術を折り込み,試作機を制作する予定である。

 電力線通信は,2002年夏に総務省が実用化の判断を先送りにした。実証実験の結果,電磁波の漏えいを確認し,短波帯を利用するアマチュア無線,ラジオ放送,船舶通信などの既存通信に悪影響を与えることが懸念されたからである。

 その後も実証実験の実施については検討が続けられ,総務省では2004年1月から「漏えい電磁波の軽減技術を実装し,他の通信や周囲の設備に悪影響を与えない」などの条件を付けて許可している。9月15日時点で,14事業者35設備での実験が許可済み。今秋以降,実験データを基に実用化するか凍結するかどうか再度議論がなされる見通しだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション