世界の大手通信事業者が集まり次世代のネットワーク・アーキテクチャを議論する業界団体「Multiservice Switching Forum」(MSF)が,10月4日からIPv6テレビ電話とIPv4IP電話の相互接続試験「GMI 2004」を実施することが明らかになった。世界4カ国を結ぶ相互接続試験は,「世界的に見て大規模なもの」(MSFのボード・メンバーを務めるNTTサービスインテグレーション基盤研究所の村上龍郎プロジェクトマネージャー)である。

 相互接続試験には,NTT持ち株会社,韓国KT,英BT,米クエストの4事業者が実験サイトを提供。米シスコ・システムズ,仏アルカテル,加ノーテル・ネットワークス,富士通などのメーカーを合わせると,40数社が参加する予定である。SIP(session initiation protocol)対応のIPv6テレビ電話とIPv4のIP電話の接続性と品質を確認する。

 IPv6テレビ電話の実験は,NTT持ち株会社の強力な“プッシュ”で実現したもの。「NTTが掲げる次世代構想RENA(Resonant Communication Network Architecture)の中心に据えるIPv6テレビ電話をグローバルで試験したかった。世界的には先行した取り組みであるため,各国の通信事業者を巻き込むのまでには苦労もあったが,結果として韓KTとIPv6推進団体である米Moon v6,NTTの3サイトを結んで実験できることになった」(村上プロジェクトマネージャー)という。

 MSFは通信事業者主導でデファクト・スタンダード(標準化基幹による手続きを経ず市場原理によって決まる事実上の標準規格)を決めるために1998年に設立された。近年は,データと音声を統合する次世代IP網のアーキテクチャを中心に議論を進めている。アーキテクチャに盛り込む要素技術は,IETF(Internet Engineering Task Force)やITU(国際電気通信連合)が標準化したものを採用し,MSFで標準化作業は行わない。

(山根 小雪=日経コミュニケーション