NTT東西地域会社が,電話基本料金の値下げを本格的に検討していることが明らかになった。

 固定電話を巡っては,8月末に日本テレコム/ソフトバンクBBのソフトバンク連合,9月9日にはKDDIの参入が明らかになった。どちらも東西NTTからメタル線を借り,そのメタル線を自社の電話網につなぎこむことで固定電話のサービスを展開する。ソフトバンク連合は12月,KDDIは来年春に開始する見通し。

 ユーザーが東西NTTからどちらかの固定電話サービスに乗り換えると,都市部では毎月1750円支払っている加入電話の基本料金を200円程度引き下げられる。日本テレコムやKDDIはユーザーから毎月1500円程度の基本料金を徴収。このうち毎月1300円前後をメタル線の利用料金として,東西NTTに支払う。

 東西NTTがこれらに対抗して基本料金を引き下げることは難しい。加入電話/INSネットの加入者は合計約6000万。仮に基本料金を100円値下げするとなると,毎月の減収額は60億円。年間で720億円。月額200円であれば年間1440億円にも上る。

 ただ,東西NTTの社内では「このまま他社にユーザーを取られていいのか」,「このまま受身でいたら社員の士気に関わる」とする意見が続出。これまで聖域だった基本料金の値下げの検討を本格的に始めた。ソフトバンク連合とKDDIの固定電話参入で,従来はなかった競争が基本料金にまで持ち込まれた。

 もっとも,2003年度の利益水準からすると厳しいのも事実。純利益はNTT東日本が580億円,NTT西日本が615億円。月額200円の基本料金値下げは両社の利益が消失する水準である。つまり,東西NTTが基本料金の値下げに踏み切る際には,これを補う新サービスの投入や何らかの構造改革を打ち出すことが必要となる。

 ただし新電電側は「仮に,東西NTT以外が1000万ユーザーをとったとしてもシェアは15%程度。さらに東西NTTは依然として月額1300円のメタル線の使用料金を徴収し続ける。東西NTTの規制緩和やグループ再編の議論はあり得ない」(KDDI関係者)と東西NTTを含めたNTTグループの動きを注視している。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション