ソフトバンク・グループの日本テレコムは8月30日,独自通信網を使った固定電話事業に参入すると発表した。12月1日から,「おとくライン」のサービス名称で個人および法人向けに提供する。ソフトバンク・グループの孫正義代表は「これが日本テレコムを買収した答えだ。NTTの独占していた基本料の市場に参入する」と宣言した。

 新サービスの特徴は(1)基本料金が割安,(2)加入時に電話加入権や施設設置負担金が不要,(3)東西NTTの加入電話と同様のサービス内容--ということ。当初1000の電話局のエリアで開始し,2005年半ばを目途に3500まで拡大する。

 具体的には,基本料金を月額1550円(都市部の場合)と東西NTTより200円安価に設定する。通話料金は,個人の場合最大で半額,法人の場合は55%割引く。工事代金は導入時は無料とし,5年間毎月100円徴収する。また,初期キャンペーンとして,登録した三つの市内・市外電話に1年間無料通話できるほか,特定の時間帯の通話料金を1年間9割引,付加サービスを3カ月無料にする。

 既存の電話番号を使い続けることができ,110番や119番など緊急通報も可能。これらの仕組みは「2年半かけて開発してきたもので,日本テレコム買収の直前に確立した」(孫代表)という。

 新サービスは,東西NTTから電話回線(メタル線)をまるごと借りる「ドライ・カッパー」という制度を活用して実現する。ドライ・カッパーの使用料金は月額約1300円。これが日本テレコムにとってメタル回線の“卸料金”となる。ドライ・カッパーを利用して,ユーザーの回線を電話局で日本テレコムの交換機に直接収容。交換機から先は日本テレコムの自前網で伝送する。その際に,ソフトバンクBBが構築したIP網も活用する見通し。

 通信事業者の日本テレコムにとっては,(1)ユーザーからの基本料や付加サービスの収入を得る,(2)東西NTTに支払っている電話接続料を削減,(3)東西NTTなど他の通信事業者からの電話接続料の収入を得る,--といった狙いがある。

 なお,IP電話サービスの「BBフォン」との関係については,「IP電話は電話だけを使いたいユーザーにとっては設置が面倒だった。法人ユーザーにとっては,より信頼性の高い電話サービスとしてお使いいただく」(孫代表)としている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション