総務省は8月27日,来年度の予算要求案を公表した。これによると2005年度に20億円,5年間で約100億円を次世代のIPネットワーク・インフラの研究/開発に投入したいとしている。

 今回の要求は今年前半に開催した同省の研究会「次世代IPインフラ研究会」の結果を踏まえたものだ。電話のIP化との関連で,通信事業者など関係者がその動向に注目している。既に英国では東西NTTにあたる固定電話事業者のBTが電話網を2006年から2年間でIP化することを発表したが,東西NTTは具体的な動きを見せていない。

 総務省はIPネットワーク・インフラへの予算要求について「電話の議論ではない。あくまでもインターネットのトラフィック増大に対応する,大容量かつ安全なネットワーク・インフラの研究/開発」(総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課)と電話との直接の関係を否定する。

 ただし,総務省が研究/開発の内容として掲げたテーマは,まさに電話のIP化とリンクしている。大きく三つある。

 第1は「分散型のバックボーン」の開発。これは現在の電話網のように冗長性を持たせ信頼性を確保することだ。そして,第2が「複数の事業者間における伝送品質の保証」。IP電話では複数のIP網がつながる。そうした場合の音声品質の確保が急務とされている。これは音声品質に応じて割り当てている電話番号とも関係する。最後に第3として「異常トラフィックの検出/制御」を掲げている。事業者が電話のサービスとして提供するために必要なセキュリティ面の確保である。

 総務省は「既存の電話網の方がIP化してくれば,リンクしないこともない」(データ通信課)とNTT側の反応を見ているフシもある。次世代IPインフラ関連の予算は他の要求額よりも3倍以上も多く,同省の力の入れようが見て取れる。同時に発表した「2005年度の重点施策」では「電気通信市場のIP網への円滑な移行のための環境整備を推進する」との主旨も盛り込んでいる。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション