8月29日,新聞各紙が報じた「日本テレコムが電話基本料金を値下げ」,「ソフトバンクが固定電話に参入」との報道について,当事者は現時点で「発表したわけではないので,内容については一切ノーコメント」(日本テレコム広報),「将来のサービスについては一切コメントできない」(ソフトバンク広報)の姿勢を貫いている。

 各紙の報道内容にはややズレがあるが,「日本テレコムが電話基本料金を値下げ」と「ソフトバンクが固定電話に参入」というのは全く同じ意味。ソフトバンク連合(ソフトバンクと日本テレコム)が東西NTTから電話用のメタル線(銅線)を借りて,ユーザーに電話やADSL(asymmetric digital subscriber line)のサービスをバンドルして提供するものと見られる。

 具体的には「ドライ・カッパー」という制度で実現する。現在一般家庭であれば,ユーザーは基本料金として1750円程度を東西NTTに毎月支払っている。これがドライ・カッパーを利用することで,1~2割程度安価に設定できる。というのも,事業者が東西NTTに対して支払うドライ・カッパー料金は月額1300円前後。この月額1300円前後を“卸値”としてソフトバンク連合がユーザーへの電話サービスを提供することで,1加入当たり450円程度の差分を得られる計算だ。

 なお,今回のソフトバンク連合による情報リークは「絶妙のタイミング」。東西NTTはかねてから「8月中に個人向けのIP電話サービスを発表する」と公言している。同サービスの内容や料金はまだ明らかになっていないため,発表時期は30日と31日の2日間しかない。ソフトバンク連合の今回の動きは,明らかに東西NTTの個人向けIP電話をけん制したものだ。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション