UHF(ultra high frequency)帯を利用する無線IC(RFID:radio frequency identification)タグの周波数割り当てと技術仕様を決定する総務省「UHF帯電子タグシステム作業班」は8月27日,第2回会合を開催した。

 割り当てを検討している950~956MHz帯の両側の周波数帯は,NTTドコモのPDC(personal digital cellular)方式の携帯電話システムが利用中。このため無線ICタグ・システムのリーダー/ライターが出す電波は,NTTドコモの携帯電話システムに電波干渉しないことが求められる。第1回会合では,割り当てられた周波数帯域外に漏れ出す電波「スプリアス」を巡って,NTTドコモとUHF帯無線ICタグ陣営の意見が激突した。

 第2回となる今回は,UHF帯無線ICタグのリーダー/ライターの出力に対して,複数の意見書が提出された。前回に引き続き,NTTドコモとUHF帯無線ICタグ側の意見には大きな隔たりがある状況だ。

 だが,歩み寄りの可能性も少し見えてきた。「UHF帯無線ICタグ側から,アンテナの指向性や利用シーンなどの具体的な条件提示があれば,条件は緩和できる」(NTTドコモの北川真清・IP無線ネットワーク開発部無線基地局担当・担当部長)ためだ。現時点では,UHF帯無線ICタグの性能や利用条件など干渉モデルの前提条件が分からないため,最悪の条件を想定したという。

 総務省は「今のままでは議論が進まない。UHF帯無線ICタグの利用シーンや,各メーカーが開発中のリーダー/ライターの実力値がどの程度なのかを見せて欲しい」(総合通信基盤局電波部移動通信課の藤本昌彦企画官)と要請。これに対してUHF帯無線ICタグ側は,「9月下旬の会合を目指して,メーカー各社と協議し資料を提出したい」(日本自動認識システム協会の大坪則和・研究開発センターRFID担当主任研究員)とした。

 このほか,議論の前提条件を巡っても意見が対立。当初からNTTドコモは,地上アナログ・テレビ放送が終了する2011年以降に,UHF帯無線ICタグと隣接する周波数帯に割り当てられる見込みの第3世代移動通信システム「IMT-2000」との電波干渉も考慮すべきと主張。一方,UHF帯無線ICタグ陣営は「将来の話をベースにするのではなく,既存システムのPDC方式の携帯電話をベースに議論したい」(AUTO-IDラボ・ジャパンの三次仁副所長)と反論した。

 だが総務省は,「IMT-2000への周波数割り当ては決定ではないが,割り当てる可能性が高い。現時点でIMT-2000への電波干渉を検討から外すことはできない」(藤本企画官)として退けた。

(山根 小雪=日経コミュニケーション