ソフトバンクの孫正義社長は8月11日,2004年度第1四半期決算発表の席上,家庭向けのFTTH(fiber to the home)や携帯電話など新たなサービスへの参入について「準備中だが,現時点ではさわりすら言えない」と語った。

 孫社長は従来,決算発表の席上で新たなADSL(asymmetric digital subscriber line)サービスのスペックやIP電話特許の保有宣言の発言を繰り返して来たが,ことFTTHや携帯電話になると慎重な姿勢を保っている。会場からの再三再四の質問攻めに「FTTHはいずれかの時期に参入」,「携帯電話は免許をいただければすぐにでも」と答えるにとどめた。

 しかし,日本テレコム買収の話になると“孫節”が復活。買収完了を当初の11月から7月に早めたことについては,資金調達が順調に運んだことに加え,「両社の経営陣がこの2カ月間毎週打ち合わせをした結果,これは11月を待つべきではないという声が双方から上がった」と経緯を披露。ソフトバンク・グループが,日本テレコムの回線も利用することで「5年間で500億円のコスト削減効果と,回線の2重化による信頼性確保」(孫社長)があると述べ,インフラ面での統合効果も強調した。

ブロードバンド・インフラ事業は183億円の赤字
 なお,2003年4~6月の第1四半期におけるブロードバンド・インフラ事業の売上高は461億円。営業損益は183億円の赤字となった。前期に比べて売り上げが224億円の増加。赤字は105億円減少した。

 ソフトバンク・グループの連結では,第1四半期の売り上げが1473億円と前年同期比で434億円増加。営業損益は,38億円の赤字と前年の同期から203億円改善した。連結の営業損益については「2004年度の下期に,まずは月次で黒字化する」(孫社長)と宣言した。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション