総務省は7月30日,携帯電話事業者や放送事業者などの無線免許事業者が国に納めている「電波利用料」の見直しに関する説明会を開催した。現在,最終報告案としてパブリック・コメントを募集中である。ここには,具体的な徴収対象は明記されていないため,「免許不要局からも徴収するのか」など様々な議論を呼んでいた。電子情報技術産業協会(JEITA)や自動車工業会がパブリック・コメントの募集を待たずに反対を表明するなど話題になっていた。

 説明会会場には100名近くが詰めかけ,注目度の高さがうかがえた(写真)。説明会は当初,総務省内の会議室で開催予定だったが,希望者多数のため三田共用会議所に場所を移した。総務省 総合通信基盤局電波部電波政策課の炭田寛祈・企画官が見直し案の背景や論点を説明したのち,質疑応答へと移った。

 今回の説明会で明らかになったのは,新たに徴収対象として検討されている免許不要局のうち,今後5GHz帯の一部を専用に割り当てる予定の情報家電と,950M~956MHzを割り当てる見込みのUHF帯無線ICタグが徴収対象になりそうなこと。

 例えば,5GHz帯を使う情報家電については,これまで固定マイクロ局が利用していた100MHz分の周波数帯の再配分を巡って,「携帯電話事業者と情報家電関連企業が,周波数の配分を巡って競合するのが明白」(炭田企画官)。両者とも少しでも多くの周波数配分を望んでいるためである。炭田企画官は,「このように競合状態にあるものは,免許局,免許不要局の区別なく,両者から利用料を徴収するのが適当」としている。

 またUHF帯無線ICタグの場合は,パッシブ型の無線ICタグ自体は徴収の対象外だが,リーダー/ライターは対象となりそう。というのも,出力が10mW以上の場合は免許局になるため,おのずと利用料の徴収対象になる。UHF帯無線ICタグは,通信距離が7~10メートルと長いのが魅力で,「UHF帯を使うメリットを発揮するには,10mW以上はどうしても必要」(無線ICタグ・メーカー関係者)からだ。出力が小さな製品についても,「“UHF帯無線ICタグ”のくくりで周波数帯を占有するため,免許不要局も分担して利用料を負担する可能性はある」(炭田企画官)と説明した。

 既存の無線LANやETC(electronic toll collection),無線ICタグに関しては,「周波数帯域を占有する無線局は徴収の対象となりうるが,占有せずに他の用途と共用するものから徴収するつもりはない」(炭田企画官)と対象外とすることを説明。ISMバンドを利用していたり,5GHz帯を使う無線LANは衛星放送と帯域を共用しているためである。

(山根 小雪=日経コミュニケーション