東西NTTの電話回線を使ったVDSL(very-high-bit-rate digital subscriber line)サービスが提供される見込みとなった。国内通信技術の標準化団体である情報通信技術委員会(TTC)において7月22日,VDSLの導入が最終合意に至った。VDSLの導入は前回7月2日の会合で基本合意済み。今回は他のDSL技術の信号との干渉について踏み込んだ議論が交わされた。

 具体的には,TTCのスペクトル管理サブ・ワーキング・グループ(SWG)において,長野県の農業協同組合系列のISPである長野県協同電算(JANIS),チップ・メーカーのメタリンク,機器メーカーのソネットがVDSL技術を提案。同VDSLの技術仕様と干渉計算を議論した。今後,NTT地域会社や総務省へのデータ提出と承認を経て,実際のサービスに適用される。

 提案されたVDSL技術は国際電気通信連合(ITU)の標準「G.933.1」に準拠したもの。JANISはNTT局からユーザー宅の下り信号の伝送に138k~3.5MHzと5.2M~8.5MHz,上りに26k~138kHz,4M~5.2MHz,8.5M~12MHzの帯域を使うことを提案した。同社は9月をメドにNTT東日本の回線でVDSLサービスを開始する予定。伝送速度については「下り最大60メガ弱,上り最大10メガ弱となりそうだ」(JANIS)という。

 もっとも,今回の合意はDSL技術間の干渉ルールを定めたTTC標準「JJ-100.01」が改定されるまでの暫定措置。今年末に改定されるJJ-100.01の次版(第3版)への盛り込みに向け同SWGで継続して議論する。これは,今回のVDSLだけでなく,7月2日の会合で最終合意に至った上り3メガ/5メガ/10メガにそれぞれ拡張したADSLも同様である。

 なお,同SWGは,22日の会合で組織を刷新した。SWGのリーダーとして,元ソフトバンクBB勤務で現北海道大学助教授の吉井伸一郎氏を選出。JJ-100.01第3版への体制を整えた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション