第3世代移動通信システム「IMT-2000」のうち,国内で未採用の通信方式の技術を検討する「IMT-2000技術調査作業班」の報告書案が7月13日にまとまった。第3世代携帯電話(3G)サービス参入を目指すソフトバンクやイー・アクセスの提案する通信方式が,報告書案に盛り込まれた。

 IMT-2000技術調査作業班は,総務大臣の諮問機関である「携帯電話等周波数有効利用方策委員会」の下部組織。日本で採用されていない3G通信方式の技術調査を実施する目的で,2003年11月に発足した。

 現在,日本では3GサービスはNTTドコモとボーダフォンが採用する「W-CDMA」(wideband-CDMA)と,KDDIグループが採用する「CDMA2000」の二つの通信方式が実用化されている。ただし,IMT-2000にはこれら以外にも,「TD-CDMA」(time division-code division multiple access),中国発の3G通信方式「TD-SCDMA」(TD-syncronous CDMA)など3方式ある。作業班では,これらの通信方式を中心にこれまで,計5回の会合を開き技術評価を実施した。

 今回作成した報告書案には,ソフトバンクやNTTコミュニケーションズ,アイピー・モバイルが提案したTD-CDMAのほか,TD-SCDMAやIMT-2000標準ではないがイー・アクセスの提案した「TD-SCDMA(MC)」(TD-SCDMA multi career),京セラが提案した「iBurst」方式,既に実用化されているPHS方式が盛り込まれた。

 報告書案は今後,携帯電話等周波数有効利用方策委員会に提出され,その後情報通信審議会が現状の技術動向を総務大臣に答申する予定。ただし,今回の報告書案では,各方式と既にサービスが始まっているW-CDMAやCDMA2000との干渉や,各方式同士の干渉についての調査は今後の課題として先送りされた。新事業者が3Gサービスに参入するには,調査を実施するための作業班を再度設置する必要がある。総務省は8月下旬にも新作業班を設置する予定である。

 こうした作業を経て,情報通信審議会がどのTDD方式を導入するか,具体的な技術条件を策定する。ここで特定の方式を単体で導入するのか,あるいは複数を導入するのかが決まる。

 その後,総務省令の改正などの手続きを経て,ようやく事業者に周波数が割り当てられる。全部で15MHzの周波数帯をどの事業者に割り当てるかを比較審査。所定の手続きを経て,事業者は晴れてサービスを開始できる。すべての手続きが終わるまで,最短でもあと1年は必要になる。