投入の遅れが懸念されていた,上りの速度を拡張したADSL(asymmetric digital subscriber line)サービスが,この8月にも開始される見込みとなった。国内の通信技術を標準化している情報通信技術委員会(TTC)における議論が決着したからだ。

 ADSLなどDSL技術について話し合うTTCの「スペクトル管理サブ・ワーキング・グループ(SWG)」で7月2日,ほとんどの技術提案が全会一致で採択。上り速度を拡張したADS技術が承認された。今後,東西NTTや総務省との折衝を経て,利用できるようになる。承認を得ることで,上りを1Mビット/秒から3Mや5Mビット/秒に拡張したサービスが可能となる。それぞれ,ADSL事業者のアッカ・ネットワークス,イー・アクセスがサービスを表明している。

 ADSLの上り拡張を巡っては他の回線への干渉問題で,昨年末から半年以上に渡りスペクトル管理SWGでの議論が紛糾。そのため上位の組織である「DSL専門委員会」に委ねられた経緯がある。6月25日にDSL専門委員会が開催されたが議論はまとまらず,採決に至らなかった。結局,議論が再度SWGに戻された。

 議論が収束した背景には,各社の思惑がある。3メガや5メガの上り拡張以外にも,いくつかの技術が同時に認められたからだ。

 具体的には,ソフトバンクBBが上りの速度を1Mビット/秒から一気に10Mビット/秒まで拡張するADSL技術,長野県協同電算(JANIS)がNTT地域会社の一般回線を利用したVDSL(very high speed DSL)技術についてそれぞれ提案。これらも同時に認められた。

 JANISのVDSLはITU(国際電気通信連合)標準のG.993.1に準拠する技術である。下り速度が最大で50Mビット/秒以上となるという。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション