米国の投資ファンド大手であるカーライル・グループは,京セラと共同で10月1日付でDDIポケットを買収する。買収交渉を担当したカーライル・グループの朝倉陽保マネージングディレクター(写真上)と丸茂正人ディレクター(写真下)が6月29日,日経コミュニケーションのインタビューに答えた。

 表舞台から消えつつあるようにも見えるPHSだが,安価な定額モバイル・データ通信として売り込めば潜在的な市場は大きいとカーライルは判断した。「月額利用料が5000~6000円のユーザー層を狙う。ユーザー一人当たりの売り上げ(ARPU)を増やすのではく,契約数を増やすことで成長していきたい」(丸茂ディレクター)。携帯電話事業者が,第3世代携帯電話(3G)の積極展開でARPUを高めることを狙っているのとは対照的だ。

 こういった戦略を取る理由について,朝倉マネージングディレクターは「ユーザーのセグメントが細分化してきた。高い料金を払ってでも高速通信が欲しいユーザーもいれば,速度はそこそこで安価な方が良いユーザーもいる。DDIポケットが狙うのは後者のユーザーであり,こちらの方が数が多い」と説明する。

 今年4月の相対(あいたい)契約の解禁により,携帯電話事業者が法人向けに安価な定額サービスを提供する可能性もある。しかし技術面の優位性から,定額サービスでは最終的にPHSが3Gに勝利するという。「定額サービスでは,ネットワークがどこまで耐えられるかが重要。技術的に見ると,PHSは大量のアクセスがあっても帯域がひっ迫しにくい」(丸茂ディレクター)。

 「PHSには,安かろう悪かろうというイメージがある。払しょくできるのか」という問いに対して,丸茂ディレクターは「盛り返せる」と力を込めて答えた。「今のユーザーは,自分にとって何が必要で何が不要か分かっている。きっとPHSの特徴が受け入れられる」。

 カーライルは,担当分野の社員が買収先企業の社外取締役に就任する形で経営に介入する。そのためDDIポケットの現役員メンバーを変更する予定はないという。「当社の投資案件では,経営の継続性を重視する。5年後7年後にどうあるべきかといった全体的な戦略を作るのが,我々の役割だ」(朝倉マネージングディレクター)と語った。

(白井 良=日経コミュニケーション)