総務省は6月28日,通信サービスなど電気通信事業における競争状況の評価結果を発表した。同省は2003年度から,(1)通信サービスをどういった市場で区分して把握するのか,(2)区分した市場内どういった尺度で判断し評価するのか--といった議論を始めた。

 評価の結果がそのまま直に規制の強化や緩和といった通信政策には反映することはない。ただし,結果次第では,従来の通信政策が微調整されたり転換する際の重要なデータと成り得る。

 初の試みとなる今回は2002年3月から2003年12月までの契約ユーザー数などのデータを事業者から収集。2003年度の各事業者のシェアや,2002年度からの変化について分析した。具体的な,通信サービスとしてはインターネット接続とデータ通信を取り上げた。なかでも,ADSL(asymmetric digital subscriber line),FTTH(fiber to the home),IP-VPNや広域イーサネットなど企業向けデータ通信サービスの三つに絞って分析を実施した。

 主な分析と評価の結果は以下の通りである。

 まず,ADSLサービスについては,東西NTTとソフトバンクBBといった上位の事業者による寡占市場であるが,単独の事業者が市場を独占している状況ではないと結論付けた。FTTHサービスは,東西NTTのシェア拡大が続き,高度な寡占市場であるとした。電力系事業者は東西NTTの5分の1程度のシェアしかなかった。また,FTTHは戸建てだけでなく,マンションなど集合住宅を独立した市場として分析すべきとした。

 東西NTTによる「光ファイバの設備を他社へ開放することが,投資インセンティブを失う」といった意見には,「投資インセンティブと設備の開放は別の問題。近畿や関東ではインセンティブが働いているから東西NTTは光ファイバを敷設している。新規に参入する事業者が光ファイバを敷設するのが現実的に可能かどうかが問題」と結論。東西NTTの光ファイバの開放政策は維持される公算だ。

 なお,2004年度は,IP電話と携帯電話など移動体通信について重点的な調査が実施される予定である。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)