日立製作所とNECは6月25日,通信事業者向けネットワーク機器の開発から製造,販売,保守までを手がける新会社を設立すると発表した(写真)。国内通信事業者向け機器市場で大きなシェアを持つ2社が組むことで,国内市場の基幹系ルーター分野で首位を目指す。中国,韓国を中心としたアジア市場での販売体制も強化し,世界規模でも30%のシェアを獲得したい考えだ。2005年度には売り上げ規模400億円,2006年度には単年度黒字化を目指す。

 新会社は,通信事業者がIPネットワークを構築する際に必要な基幹系ルーターとLANスイッチを提供する。設立時の人員は350人となる見込み。両社の関連部門で基幹系ルーターやLANスイッチの開発を手がける技術者などが,出資比率に応じた割合で出向する。新会社の資本金は55億円。日立製作所が60%,NECが40%ずつ出資する。現時点で社名は未定。設立は10月1日を予定している。本社は,日立製作所のIPネットワーク事業部がある東京品川区・南大井となる見込みだ。

 新会社設立の狙いは,設計・開発を迅速化することで市場のニーズに合ったタイミングで製品を提供できる体制を整えること。さらに,通信事業者やプロバイダが重視する機器の信頼性やサービスの品質を向上させる機能を盛り込むことで,米シスコ・システムズや米ジュニパー・ネットワークスなど海外メーカーとの差異化を図っていく。

 これまでNECは,シスコやジュニパーなど海外メーカーの機器を組み合わせながら,通信事業者向けネットワーク構築を手がけてきた。しかし,これら海外ベンダーの製品を扱うインテグレータは多く,競合他社との違いが打ち出しにくい状況だった。さらに,世界規模でのブロードバンドの普及をにらみ,IPネットワーク上で電話機能を提供するサーバー機や光ネットワーク機器など,同社が強味とする関連製品を売り込みたいという思惑がある。NECは新会社が開発する独自製品を組み合わせることで,ネットワーク構築メーカーとしての競争力強化を狙った。

 日立製作所は他の国内機器メーカーに先駆けて,基幹系ルーターなどIPネットワーク機器の開発を手がけてきた。同社が販売する事業者向けルーター製品「GR2000シリーズ」と「GR4000シリーズ」は累計で1万台強の出荷実績を持つ。日立製作所にとっては,これら機器の販売機会を拡大できる。

 既に2社は共同で製品開発を進めており,2005年3月末までには新会社として新製品を提供したい考え。日立製作所が現在提供するGR2000,GR4000の各シリーズは,新会社に移管。新会社設立後,日立製作所はこれら製品を新会社からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けて販売を継続する。新会社の開発拠点は東京近郊に設置するが,生産は日立製作所の工場を利用する予定。

(加藤 慶信=日経コミュニケーション)