NTTドコモの中村維夫社長は6月21日,社長就任後初の記者会見を開き,今後の経営方針などを説明した。顧客サービスのさらなる向上や新事業に取り組み,減収減益からの早期回復を目指す。

 中村社長は「今は厳しい状況だと思う」と本音を明かしながらも,「早期回復させることが私の使命」とコメント(写真)。「(NTTドコモの)創成期のようにスピード重視で物事を進めて行きたい」と意気込みを語った。

 NTTドコモが今後注力するのは(1)顧客満足度の向上,(2)新収益基盤の確立,(3)第3世代携帯電話サービス「FOMA」の加入者拡大--の3点。(1)は,既存のユーザーへのきめ細かいサービスを充実させる。携帯電話の新規加入者が頭打ちになる今後は,優良な顧客を確保するために不可欠。「料金,ネットワーク品質,アフター・サービスなど,あらゆる面で顧客に向いたサービスにしていく」(中村社長)。

 (2)の新収益基盤の確立については,6月16日に発表した非接触型ICカード技術「FeliCa」を搭載した携帯電話機や赤外線通信,バー・コード読み取り機能などをFOMAに搭載し,新しいビジネス市場を確立する。音声やデータ通信トラフィック以外から得られる「ノントラフィック収入」の増大を目指す。これらの施策でNTTドコモのサービスの魅力を高めながら,(3)のFOMA加入者獲得に結びつけていきたい考えだ。

 NTTドコモの2004年3月期の売上高は5兆円を突破し,営業利益も1兆1029億円と過去最高を記録した。だが,今期は順調に成長してきた携帯電話市場の加入者数の頭打ちや,好調な競合事業者との料金競争激化で減収減益を見込む。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)