米シスコ・システムズは現地時間の6月17日,コア・ルーター専業のベンチャーである米プロケット・ネットワークスの知的財産とエンジニアリング・チームの大部分,優良資産を買収することでプロケットと最終契約を締結したと発表した。

 具体的には,プロケットが所有するICチップやソフトウエアに関する特許,ソフトウエアのソース・コードおよび一部の技術者を約8900万ドル(およそ100億円)で買い取る。この金額は,プロケットがベンチャー・キャピタルから集めた資金が3億ドルだったことを考えると破格といえる。

 買い取りは2004年10月までに完了する。プロケットからシスコに移る技術者の人数や時期は不明。だがプロケットの技術者は,シスコが5月25日に米国で発表したコア・ルーターの新製品「CRS-1」のチームに加わることが決まっている。

 今回,シスコが買い取るのは,あくまで特許や技術者だけ。会社自体や製品は残る。「シスコには既に多くのルーター製品がある。プロケットの製品と統合するのではなく,シスコ製品の性能向上に役立つ部分だけを買い取る形となった」(シスコ)。残されたプロケットは“骨抜き”にされた形だ。

 国内では,NTTPCコミュニケーションズや東京エレクトロン,ネットワンシステムズの3社とプロケットが合弁で設立したプロケット・ネットワークス・ジャパンが製品を販売している。NTTPCコミュニケーションズは,「発表を見て驚いている。状況が把握できておらず,この先どういった形になるのかは全く分からない状態」とコメントしている。

 プロケットの設立者の一人でルーティング・ソフトの開発などを手がけたトニー・リー氏は既にプロケットを離れ,NTTベリオに在籍済み。もう一人の設立者であるビル・リンチがシスコに移るかどうかが着目される。

 一部報道では,6月に入ってプロケットが自社を売りに出しており,シスコと米ファンドリー・ネットワークスが買収に名乗りを上げているといわれていた。ファウンドリーは今回の件に関して,一切のコメントを控えている。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)