政府は6月15日,行政の無駄を省きコスト削減につなげるための「行政効率化推進計画」を取りまとめた。同計画には,公共事業や電子政府構築に関するコスト削減策などに加え,通信費削減のためにIP電話の導入を全省庁が検討するように明記されている。

 併せて地方公共団体に対しても,国の経費削減の取り組みを参考にするよう周知する。このため,各中央省庁にIP電話が大規模導入されれば,全国の自治体・公共団体へもIP電話導入が一斉に進む契機となり,“IP電話特需”が生まれる可能性もある。

 行政効率化推進計画を発表した内閣府によると,IP電話に着目したのは「IP電話を導入する民間企業が増え始め,サービスも出そろってきた」ため。「特に長距離電話のコスト削減に寄与すると考えた」(内閣府)。IP電話導入によるコスト削減効果は各省庁ごとに試算する。採用するIP電話関連機器のベンダーやサービスも,省庁ごとに入札で決める模様。

 今後すべての省庁がそれぞれ,電話の利用状況を調査して費用対効果を算出。110番や119番などの緊急通報ができないサービスがあるなどの技術的な問題点を踏まえて,導入を検討する。検討期間のめどは,12月末までとされた。

 例外的に農林水産省と特許庁は,2004年度から順次導入を開始する。両者は以前からIP電話の導入を検討しており,ちょうど2004年がPBX(構内交換機)などの設備更新期に当たっていたため。

 農水省では7月中旬から,「農林水産政策研究所」の一部建物内の電話機80台でIP電話を試験的に使えるようにする計画。一方の特許庁は,「まだ具体的には動いていないが,早ければ2004年秋から2005年3月末にかけて,約2500人いる全職員の電話をIP電話にしていく予定」。

(宗像 誠之=日経コミュニケーション)