ADSL(asymmetric digital subscriber line)事業者のイー・アクセスは6月14日,事業化の準備を進めている高速無線データ通信サービスの実験状況を公開した。東京・虎ノ門にあるイー・アクセス本社に無線基地局を1局設置。モデム型の無線端末を接続したノート・パソコン3台を使用して実験している(写真)。

 同社が実験中の無線通信方式は,「TD-SCDMA(MC)」(time division-synchronous code division multiple access multicareer)と呼ぶ方式。米国のベンチャー企業であるNavini Networks(ナビーニ・ネットワークス)が開発した方式で,5月28日に総務省からTD-SCDMA(MC)を実験するための無線基地局の本免許を取得した。

 イー・アクセスは,TD-SCDMA(MC)の高速性を強調した。同時通信する端末がわずか3台という条件ながら,「基地局から2km離れた地点での下り実効速度は2Mビット/秒程度出る」(イー・アクセスの諸橋知雄・新規事業企画本部長)。

 このほかに,米マイクロソフトのテレビ会議ソフト「NetMeeting」を利用した音声通話や,時速40キロで移動中の車内での無線通信実験なども披露した。今後は無線基地局の数を3局に増やし,端末が複数の基地局の間で通信を自動的に切り替える「ハンドオーバー」などを実験する予定である。

 総務省は現在,2010MHz~2025MHz帯を利用する第3世代移動通信(3G)サービスの技術評価を審議する「IMT-2000技術調査方策作業班」の会合を続けている。これまで5回の会合が開かれ,イー・アクセスは「TD-SCDMA(MC)」方式を,ソフトバンクやアイピーモバイルは「TD-CDMA」を提案している。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)