英国の通信事業者であるBTは6月9日,国内の電話網をIP技術で全面的に置き換えると発表した。2006年から大規模な移行を開始し,2年後の2008年にはほとんどの家庭のユーザーがIP電話を使うことになる。同社はこのプロジェクトを,21st century network(21CN)と呼んでいる。

 BTはIP電話のメリットとして,(1)ユーザーへのサービス向上,(2)設備の構築や管理費の節減,を挙げている。サービスが向上する理由は,光ファイバなど大容量の回線を利用してIP電話の音声だけでなくインターネット接続などデータ通信や映像の配信を提供できることとしている。

 また,設備費は年間約10億ポンド節約できるという。これは日本円にしておよそ2000億円にも上る。現在電話網とデータ網といった具合に複数のネットワークを構築しているが,これを単一のIP網でまかなうことができるためコストが削減できるとしている。

 なおBTは本格導入に先駆けてケンブリッジなどの1000ユーザーを対象にIP電話の試験サービスを実施する予定である。

 一般家庭向けのIP電話には,クウェスト・コミュニケーションズ・インターナショナルなど米国の地域電話会社が昨年末から試験的に取り組みはじめている。また,日本では今年の8月に東西NTT地域会社が集合住宅を対象にIP電話のサービスを開始する。ただし,日米の事業者ともに,BTのように電話網をすべてIP網へと移行するといった思い切った考えは示していない。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション)