総務省は6月10日,ブロードバンドを使える地域と使えない地域で生じるデジタル・デバイド(情報格差)の是正に向けて,研究会を開催した(写真)。名称は「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」で,開催期間は2004年12月末までをめどとしている。デバイド解消に向けた取り組みを進めている地方自治体,ブロードバンド・サービスを提供する通信事業者,メーカー,識者などで構成される。

 第1回会合では,まず田端正広・総務副大臣が「デジタル・デバイドの是正,全国どこでもブロードバンドを使える環境整備が重要だ」とあいさつ,次いで総務省が全国のブロードバンド普及状況を説明した。そのあと,島根県と岡山県がそれぞれの県のブロードバンド普及状況と普及戦略をプレゼンテーションした。

 総務省の説明によれば,ADSL(asymmetric digital subscriber line)は全国の市町村の82.2%で提供されているが,内訳を見ると「市」は100%,「町村」は76.9%と格差がある。FTTH(fiber to the home)だと全体は28.0%だが,内訳は「市」が75.2%で「町村」は13.9%とより格差が大きい。市町村の人口が少なくなるほど,ブロードバンド提供中の割合が低くなるデータも紹介された。

 地方のブロードバンド普及策は様々ある。島根県は民間の通信事業者の積極的な設備投資を誘導する方策を採用。山間・離島を含む県内全域で同等な高速通信環境を実現したという。一方の岡山県は「岡山情報ハイウェイ」を構築して,行政系ネットワークに使うとともに民間にも開放する策を採っている。

 研究会では,ブロードバンドのデジタル・デバイドの実態や課題を整理する。次回以降,ブロードバンド整備による経済効果や普及予測,ブロードバンド整備コストの試算,取り組み事例などを検証していくという。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション)