電力系通信事業者のパワードコムは5月18日,2004年3月期の決算を発表した。売上高は前の期比6.9%減の1693億2700万円,経常損益は120億5600万円の赤字決算となった。2004年3月期は黒字化を目標にしていたが,赤字幅が前の期に比べ約20億円拡大し減収減益となった。

 今期は,(1)パワードコム本体が手がける企業向けデータ通信事業,(2)7月に電話事業を統合し,グループ会社となるフュージョン・コミュニケーションズのIP電話事業,(3)同じく7月に個人向けインターネット事業を統合するDTIのブロードバンド事業--を3本柱に,グループ戦略を進める。

 特に,ブロードバンド事業では,東京電力のFTTH(fiber to the home)サービス「TEPCOひかり」を活用し,ネット接続,IP電話,映像伝送を組み合わせた“トリプル・プレイ”と呼ばれるサービスを強化。映像伝送では,IP放送やVOD(video on demand)サービスに加え,東芝が開発したDVDレコーダーにコンテンツをダウンロードして記録できるサービスを計画していることを明らかにした。2004年中にもトライアルを開始するが,商用化の時期は未定だという。

 2005年3月期の業績見通しは明らかにしなかった。7月にフュージョンやDTIとの事業統合を控えており,6月末の株主総会後に社長や会長を含めて大幅に経営陣が入れ替わるからだという。ただし,「新体制発足後,業績見通しや新戦略を新しい経営陣が発表する」(白石社長)。

 白石社長は6月末に退任し経営陣からは退くため,今回がパワードコム社長としての最後の記者会見となった(写真)。「業績を上げられなかったのは非常に残念だが,いい後継者に出会えて良かった」とコメント。業績回復は6月末に社長就任予定の,元米i2テクノロジーズCOOの中根滋氏に託す。新会長には,現BTジャパン会長兼CEOの北里光司郎氏が就任予定。
(宗像 誠之=日経コミュニケーション)