世界の大手通信事業者が集まり次世代のネットワーク・アーキテクチャを議論する業界団体「Multiservice Switching Forum:MSF」が,10月に世界規模でVoIP(voice over IP)の相互接続試験を行うことが明らかになった。4月27日から3日間に渡ってカナダ・トロントで開催された定期会合で議論したもの。

 MSFは通信事業者主導でデファクト・スタンダードを決めるために1998年に設立された。近年は,データと音声を統合する次世代IP網のアーキテクチャを中心に議論を進めている。アーキテクチャに盛り込む要素技術は,IETF(Internet Engineering Task Force)やITU(国際電気通信連合)が標準化したものを採用し,MSFで標準化作業は行わない。

 現在,NTT持ち株会社(以下,NTT),米ベライゾン,米クエスト,英BT,韓国KTなどの大手通信事業者のほか,米シスコ・システムズ,仏アルカテル,加ノーテル・ネットワークス,富士通,NECなどのメーカーが加盟している。

 10月にMSFが主催する相互接続試験「GMI 2004」は,米クエスト,韓国KT,英BTとNTTがサイトを提供し,世界4カ所を結んだ大規模なものになる。VoIPの基本接続だけでなく,VoIPとセキュリティ,QoS(quality of service),アプリケーションをそれぞれ組み合わせた試験を実施。呼制御プロトコルにはSIP(session initiation protocol)を採用する。

 相互接続試験の内容は検討の段階にあるが,NTT持ち株会社は単なるVoIPだけではなく,テレビ電話を強力にプッシュしている。「VoIPは他国ではこれからのサービスだが,日本では商用サービスの実績が十分にある。当社が掲げる次世代構想“RENA”の中心に据えるテレビ電話を是非試験したいと考えている」(MSFのボード・メンバーを務めるNTTサービスインテグレーション基盤研究所の村上龍郎プロジェクトマネージャー)という。

 相互接続試験の詳細は,7月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される次回会合で決まる見通しだ。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)