NTTドコモは5月14日,立川敬二社長の後任に,中村維夫(なかむら まさお)副社長を昇格させる人事を発表した。6月18日に開催予定の株主総会での承認を経て,正式に就任する。

 立川社長は3期6年を勤め上げ,6月に退任する予定。「6年経って,経営方針も変える時期に来た。経営環境はかんばしくなく後任には申し訳ないが,新しい発想と経験を生かしながら新しいドコモを作ってもらいたい」(立川社長)。

 中村副社長は「身の引き締まる思い」とやや緊張した面持ち(写真)。「今期は減収減益を見込むが,これをできるだけ早く回復させるのが私の使命。挑戦者の気持ちでがんばりたい」と抱負を語った。中村副社長は旧NTTの労務畑出身。98年にNTTドコモ取締役となり,2002年に代表権を持つ副社長に就任した。財務部長,MM事業本部長,営業本部長などを歴任している。

 NTTドコモの2004年3月期の売上高は5兆円を突破し,営業利益も1兆1029億円と過去最高を記録した。だが,順調に成長してきた携帯電話市場の加入者数の頭打ちや,好調な競合事業者の影響で新たな戦略の確立を迫られている。

 中村副社長は今後NTTドコモが注力する分野として,(1)第3世代携帯電話サービス「FOMA」の加入者拡大,(2)電子商取引などの新しい収益基盤の確立,(3)顧客満足度の向上--を挙げた。「2~3年で回復基調にもっていきたい」(中村副社長)。

 こうした方針を促進するため,7月1日に組織改革も実施する。具体的には,「マルチメディア事業本部」と「iモード事業本部」を統合し,「プロダクト&サービス本部」を設置。サービス開発やFOMAなどの商品企画に関する体制を整理する。新本部のトップには,iモード事業本部の榎啓一本部長が就任する予定。「今必要なのは新サービスを作りだすこと。NTTドコモには技術はあるが,これまで新サービスにつながっていないのが課題」(立川社長)。新組織は,こうした課題を克服する狙いがある。

 今後は法人向け営業体制も強化していく。「法人営業は今後が激しい戦場になる。法人営業本部の組織を再編成し,力を注ぎたい」(中村副社長)としている。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)

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