KDDI研究所とKDDIは5月12日,地上デジタル放送を閲覧できる携帯電話の試作機を披露した。2005年度にも始まる携帯端末向けのデジタル放送(いわゆる1セグ放送)に向けて,NHK放送技術研究所と共同で研究した。今後,実証実験も開始する予定である。

 披露した試作機は,日立製作所の「W11H」をベースに開発した。地上デジタル放送を受信するためチューナーやアンテナを内蔵したモジュールを携帯電話機の背面に装着する。データ放送用のコンテンツ記述言語「BML(broadcast markup language)」の携帯電話プロファイルに対応し,データ放送の表示も可能である。

 試作機を使い,KDDIのコマーシャルを放送するデモも実施した(写真)。ほかにも,地上デジタルで放送中の番組中に,番組とは別のカメラ・アングルで撮影した映像を通信回線経由で表示するなど,放送と通信の連携例を紹介した。このほかにも,携帯電話機のGPS(全地球測位システム)を使い,「映画情報を配信する番組の中で,最寄の上映劇場に関するデータを提供することも可能」(KDDI)。

 今後は,携帯端末向けデジタル放送の開始に向けて,チューナーやアンテナの小型化を目指す。同時に,放送と通信を連携したコンテンツの開発を進める予定だ。ただし,KDDIにとってはビジネスモデルの構築が今後の課題。単純に地上デジタル放送を受信できる端末を開発しても,「通信トラフィック増につながらなければ収益にならない」(KDDI)からだ。ビジネスモデルの構築については,共同開発したNHKや民放テレビ局などと模索していく。

(蛯谷 敏=日経コミュニケーション)