ソフトバンクは5月10日,2003年度決算を発表した。連結の売り上げは対前年度比27.2%増の5173億9300万円となったが,最終損益で前年度から71億円マイナスの1070億9400万円の赤字となった。ADSL(asymmetric digital subscriber line)サービス「Yahoo! BB」などブロードバンド事業は,売り上げが伸びているものの875億円の営業赤字となった。

 それでも孫正義社長は,「2003年度は第3四半期,第4四半期ともに,加入者当たりの月額利用料が4000円を超えた。ADSL,IP電話,無線LANをまとめて利用する利益率が高いユーザーが増えている」などと好調さをアピール(写真)。ブロードバンド事業が長期的には順調に成長していくと何度も強調した。

 ただしYahoo! BBの解約率は,2月に発覚した個人情報漏えい後に悪化している。2003年12月は1.03%だったが,2004年2月は1.16%,3月は1.89%,4月は1.57%となった。孫社長は,「5月の日時単位の解約数や新規加入状況は好転している。6~7月には,元のペースに戻るはず」と説明した。もっとも,個人情報漏えいの影響は大きかった。「漏えい事件の前後は新規顧客獲得のアクセルを踏むため,テレビCMや営業活動を強化していた。これを急に止めるわけにいかずに空回りした。このため,第4四半期は営業赤字がかさんだ」(孫社長)。

 FTTH(fiber to the home)サービスへの参入については,「現時点で,いつから,いくらの料金で,どのくらいのボリュームで参入すると言うには時期尚早」(孫社長)と明言を避けた。もっとも,「提供に向けた準備は進めている」と前向きな姿勢をうかがわせた。

(中川 ヒロミ=日経コミュニケーション)